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作成年月日:2016年2月5日

海外情報プラス

海外情報−中国1月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
分野:人事・労務、その他(企業経営)

知識だけでは改善不可

蘇州工業団地にある中国系電子部品製造企業へ訪問し、G会長兼社長その他と面談、またG会長の案内で工場見学をして各種ご相談に応じた。

「当社は上海市場に上場している大企業であり、最近脚光を浴びている「幸福企業グループ」の中心的な存在の超優良企業である。当社幹部が12月に幸福企業仲間の会社を訪問した際、改善活動が盛んに行われているのを見て、良き指導者が欲しい」とのことで呼ばれたわけである。

各種手法の知識はある

まず、会社見学をして驚いた。 日本で有名な管理手法の大部分をやっているのである。TPS(トヨタ生産方式)はもちろん、そのためのカンバン方式、JITは当然導入している。それを体系だったシステムにして中国で注目されているLPS(リーン【精益】生産方式)も3年前に導入しているそうだ。

しかし、「思ったほど成果が出ていない、改善活動もなかなか活発にならないので教えて欲しい」とのこと。すなわち知識はあるが活用できていないということである。

目で見る管理のはき違い

各種手法をやっていることは各所にある掲示板で分かった。工場内の中央廊下は掲示板のオンパレード。

最初にあるのが共産党の会社組織と活動方針の掲示。上場企業であり、G会長も市の共産党役員であることからキチンと掲示が必要だそうだ。

次の掲示板が「幸福企業」を目指す活動組織と方針、そして活動状況である。これは孔子の教えを見直し普及させる活動である。構内に畑まで作りそれを食堂で食べていた。親孝行に関わる活動なども熱心にやっている様子だ。

次にやっと、各種改善活動に関する掲示板が出てきた。もうこれを見る頃には時間が経ち疲れてしまった。視察の私は必死に見るが、普通の人は、ましてや社員は見る気がしなくなっているだろう。

VM(目で見る管理)の典型的なはき違いである。

・見せればよい

・見せたからお役目は果たした

・見ないほうが悪い

という悪い事例だろう。

管理者は飽和状態

当社は数年毎に新しいシステムや手法を取り入れているようだ。

どこかで成果を挙げたと聞けば金に糸目をつけず導入している。遅れている中国製造業を何とかして先進国並み以上にし、中国の発展に寄与したいというG会長の焦りとも言えるだろう。

しかし、管理者はそれについていってない。消化し切れていない。

私の見学に付いていた製造技術の管理者でさえも知らない表現の標語や行動規範が掲示されていたことでも分かる。これらの掲示は「掲示のための掲示」でしかなく、社員がそれによって影響を受けることはあり得ないだろう。すなわち各種手法を取り入れて各種の運動もしているが、結果はした「フリ」をしているだけである。

基礎的な5S運動は知らない

最も問題なのは5S運動を知らないことである。

たぶん、各種手法を教えた日系コンサルタント自体が5S運動を知らなかったのであろう。知っていても重要性を知らなかったのであろう。

壁の掲示を見ると5S運動に関わる指導や注意事項が多数あるが守られていない。

5S運動とは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけのローマ字表示の5つの頭文字Sから命名され、50年ほど前から日本で活躍していた運動である。これが戦後の高度成長と高品質を生んだ大元である。

工場見学した結果、彼らが知らないのは5S運動とTWI(監督者訓練法)だけだった。しかし、この二つ、特に5S運動を知らないのでは各種の理論は全く活かされない。

有名な格言に次がある。

・TWIや5SだけをやっていてもLPS(リーン生産方式)は出来ないかもしれないが、

・TWIや5SをしなければLPSは絶対に出来ない。

全ての基礎がこの二つであり、5Sの中心が「しつけ」であり、しつけを他の4Sが回っている。

当社は、幸福運動はしっかりと行ってその基礎があるので「しつけ」も教え込めば、5S運動は数カ月で軌道に載せられるだろう。

例えば、我々外来者が管理者の案内で工場見学をしている途中、廊下で社員とすれ違っても誰も挨拶をしない。目礼すらない。しかし、G会長と一緒に廊下を歩くと、すれ違った全社員が立ち止まり、G会長に挨拶をする(会長の後ろを歩いている私にはしない)。

これは挨拶の本質すなわち「しつけ」そして5S運動を教えてないことである。5S運動を教えれば改善はたやすいことである。 また、その見本となる会社が蘇州にあるので見学すべきと紹介した。

会長へ直言する人はいない

色々とお話を伺い工場見学もさせていただくと、中国にある日系製造業よりはるかに先進的であり素晴らしい管理をしていることは事実である。近いうちに日系企業は管理面では追い越されるような恐れすら感じた。

しかし、それもカリスマ会長のG氏が存在し続けることが前提である。 会長を補佐する或いは片腕となるNo.2が見えないことが問題である。 各種手法の本質も理解せず、会長の言うがままにやらされている現在の幹部がG会長不在でその手法を継続発展させていけるとは思えない。

見学後、各種の考察と意見を述べたところ、G会長から「ズバリの指摘で大変有り難い」とのお言葉をいただいた。これはお世辞とは思われない。 カリスマ会長にもの申せる者がいないということを実感したのであろう。

以 上