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作成年月日:2015年12月8日

海外情報プラス

海外情報−中国12月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
分野:人事・労務、危機管理、その他(企業経営)

組織活動が出来ない日系企業

上海郊外の日系企業D社のS社長より、親会社からやるようにと指示のあった5S運動を開始したいが、どうやってよいか分からないので教えて欲しいとのご相談があった。

しかし、そのご相談をしながら企業実態を見聞きすると5S運動以前に様々な経営問題が散見された。聞けば、製造業でありながら出向している日本人3名はS社長はじめ全て営業畑の方ばかり、しかも日本時代に、経営職経験者はゼロ、企業経営としてはアマチュア集団で経営していることがわかった。 最大の問題は組織活動がゼロということである。

平社員が経営補助職で出向

D社の製品は巨大な製造設備に原料を供給すればほぼ自動的に出来てしまう、ある意味で装置産業ともいえる。したがって、装置を据付し運転やメンテナンスが軌道に乗れば、日本人の製造管理者や技術者の常駐は不要であるということで、いつの間にかそれで出来た製品を売り込む営業畑の者だけが出向する会社となった。

S社長の日本時代は、ある営業部門の課長。その他の2名は社長補佐という職種で出向しているが、日本時代は監督職すら就いてない一営業担当者であり、社長補佐の職責は果たしていない。すなわち、出向者の3人とも、企業経営としてはアマチュア集団であり、そのための弊害が随所に目立ち始めたことが分かった。

中国人を副社長に抜擢したが単なる管理職

親会社は、人材の現地化をはかろうということで中国人2名を副社長に抜擢した。一人は製造部長(技術課は製造部の内)兼務。もう一人は営業部長兼務である。

しかし、実態は副社長が部長を兼務しているというよりも、部長が副社長と言う肩書きをもらっているだけであり、担当部長としての職責以上のことはしようとしていない。

任命者が副社長の職責とは何かを理解させていないのである。結果として単なる管理職の職責しか果たしておらず、経営職は名前だけであった。

補佐不在の社長

残りの部長職である管理部(財務課と人事課)と品質管理部は社長が部長兼務でいる。

S社長が営業部長を兼務することは前歴から見て出来るかもしれないが、未経験分野の管理部長と品質管理部長の職責は全く務まっていない。数年間の学習期間が必要であることは当然である。

しかし、社長を補佐すべき副社長も社長補佐もそれぞれ2名いるが、補佐役としての職責は果たしていない(果たせない)。

結果的に、管理部内の人事課と財務課は部長不在状態となり課長の好き放題の会社となった。品質管理部は中国人副部長にお任せとなってしまった。

5S運動は全く知らない、しつけゼロの会社

5S運動は、親会社の社長が視察に来られたときに見るに見かねて「5S運動を勉強してやりなさい」と指示をされていったのである。S社長及びその他の日本人出向者は5S運動をしたことがない。何故なら親会社では工場部門しか5S運動をしていないからである。

さすがに、5Sとは「整理、整頓、清掃、清潔、しつけ」のローマ字の頭文字であるSをとってのことだと言うことはご承知である。

しかし、例えば整理と整頓の区別は付かないし、それぞれをどのように教え定着させるかの知恵は全く無いことからご相談に来られたのである。

さっそく会社見学をさせていただくと、親会社の社長が見るに見かねた理由がよく分かった。「これでも日系企業か?」といいたくなる「しつけ」状態である。しっかりとしたマナーを心得ているのは、守衛だけである。守衛がしっかりとしているのは、彼らは警備保障会社から派遣された社員であり、警備保障会社からしっかりと鍛えられているからである。

組織活動が出来ていない

組織図を見ると、全ての部門を社長が掌握し、全て社長に報告が行くように見える。その意味では問題ないようだが、社長が不在時に誰が決裁するのか、誰が代わりに指示・指導するのかが不明確である。

特に、管理部は社長が部長を兼務しているが副部長はいない。結果的に、社長に人事課長と財務課長が直結しており、両課長が強い権限を握っている。他部門の部課長からの相談や依頼事項に対してはほとんど拒否し、相談にはならない。

営業や製造部門は副社長に直結しており、社長すら意見を言い難い。

結果的に、各部課長が協議相談し、物事を考えて行動するという習慣はなくなり、社長出席の会議で社長の決裁で進むことしか出来ないという、組織活動ゼロの硬直化した会社となってしまった。

S社長は、現状の問題点に気が付き、5S運動の指導という名目でコンサルタントと契約し、様々な改革に向かった。

手始めには、社員研修による意識改革をはかり、信賞必罰の賃金制度制定の必要性を理解させることにより、永年勤続者でなければ優遇されないことを変えて、徹底的に膿を出すつもりである。

以 上