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中国

作成年月日:2015年12月7日

海外情報プラス

海外情報−中国11月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
分野:人事・労務、危機管理、その他(企業経営)

日系企業が抱えるチャイナリスク

中国にある日系企業には、中国だからというリスクは数多く有る。

しかし、その多くはそれを承知のうえで覚悟して経営すればリスクではなくなる。それよりも日本にあれば起きない、中国にあるからこそのリスクは現地だけでは対処できない深刻な問題である。

日本では有名なチャイナリスク

近年抱えるチャイナリスクの代表は下記であるが、何れも多くの日本人に知られた問題であり、それぞれに覚悟して予防処置はされているはず。

・製造・販売原価の高騰

・売掛金回収困難

・政府からの突然の工場立退き命令

・相変わらずの品質問題

それぞれの内容については日本の方が報道熱心であり、日本の方が知る機会が多いと思われるので詳細は省く。 いや知らない? それは無関心すぎると思う。

日本の新聞や雑誌を見ていると中国に関する記事がゼロの日は数えるほどしか無く、その報道内容も中国のマスコミで取り上げない(取り上げることができない)内容も詳細に報道されている。中国のマスコミは全てが政府系或いは政府の支配下にあると言ってよいため、こうなる。

日系企業特有のリスク

前項は中国だからというリスクであるが、日系だからというものではない。それとは別に日系企業特有のリスクがあるが、多くの経営者はそれに気がついていないことが問題である。たとえ現地法人経営者がそれに気がついていても、実質的な経営者である親会社が知らなくて放置されているケースが多いことが実情である。

最悪なことは、現地法人経営者も親会社も気がついていないことであろう。盛んに喧伝されている日中関係の悪化によるリスクよりも遥かに大きなリスクであり、その代表は下記である。

@ 現地に経営権が無い・・・現地に主体性がない

A 愛社精神が育っていない・・・倒産を喜ぶ従業員

B 頼りにする幹部不在・・・誰を信用してよいか分からない

初期は経営権を与える必要性が無かった

中国現地法人に経営権を与えていないという@の事情には色々あるが、最も多い理由は「その必要性が無い」ということ。1990年代から2000年代初期にかえての中国現地法人は、物を安く作るための下請け的な存在であり、

・親会社から材料を仕入れ、

・親会社の指導指揮下で作り、

・親会社が指示した価格で、

・指示された会社に売るか輸出する

それだけの存在であった。

決算書も親会社の指示した会計コンサルタントの指導に基づいて作るだけであり、現地法人にほとんど経営判断は不要であった。したがって現地の社長も名目だけの存在であり実質的経営者は日本にいたのである。

現在抱えるチャイナリスクを考えた場合それでは経営が成り立たないことは自明のこと。相変わらずそれに気がついていない或いは気がついても対処する力のない企業が多いことが日系企業特有の第一の問題である。

親会社に言わせると「任せられる者がいない」ということかもしれないが、日本全国を探せば居るはずである。身の回りにいないというだけで中国子会社の経営を放棄してよいのだろうか?

憧れの日系企業からの下落

そのようなリモートコントロール(しているつもり)の会社に愛社精神が育つはずが無い。

昔は憧れの存在であった日系企業も、経営権(主体性)のない企業体質に愛想をつかされてきている。原価高によって企業の存在価値が危うくなれば、普通はそれに危機感を持たれ自然退職が増えるものであるが、今は倒産を待つようになった。倒産し公的な精算をすれば従業員の退職金が増えるからである。

倒産を防ぐために、頑張るような熱意あるしっかりした従業員にはとっくに辞められており、悲劇的な実情である。

人材の現地化という名の放任

日系企業の多くは、日本の親会社が直接的間接的に管理することに限界を感じたのは事実である。それなら現地法人に経営者(社長)適任者を送り込めばよいのであるが、それをせずに人材の現地化という方便で逃げたのが悲劇の始まり。

日本から送り込んだ社長は、昔どおりモノづくりか売ることしか出来ない管理職であり経営は出来ない。したがって、優秀な中国人を採用しそれを副社長とした。

副社長の管理下には、人事・労務、財務・会計は必ず入れている。すなわち「ヒト」、「カネ」を握らせている。更に、購買や倉庫管理、営業なども副社長管理下にしている企業もある。この場合は「モノ」まで任せているのである。

任せるのと放任とは違うのであるが、その違いを理解していない企業が多い。

「ヒト・モノ・カネ」の経営3要素を中国人に握られた企業は、既に日系企業ではない。しかし、法的に経営権のある社長は日本人である。権利を持つ者はその力が有ろうがなかろうが、責任を負わなければならないのはどの国の法律も同じである。

経営権を実質的に放棄した日本人社長が経営責任を負ってくれるので、実質的に経営権を握った副社長は好き放題にできる。

繰り返すが、任せることと放任とは違う。そして任せるのであれば、それなりに教育し責任も明確にすべきである。そして徹底的な監査・管理で不正の芽を潰す努力を継続することが肝要である。

それらが無くて放任されれば、まっとうで優秀な人材でも悪魔の手に陥る可能性が高いことは日本の数多くある事例でもお分かりのとおりである。

それすらも出来ない企業は、キズの浅い内に中国から撤退すべきである。

以 上