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作成年月日:2015年8月8日

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海外情報−中国7月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
分野タグ:人事・労務、危機管理、その他(企業経営)

人材の現地化を急げ、しかし、放任するな

上海郊外のR社のT社長(中国では総経理という)から、中国人管理部長を如何に管理すべきかとのご相談があった。

R社は金属製品を作る日系企業である。 特殊な製品であり、しかも重くて輸送が困難であるため、中国に進出した日系企業各社からの要望で10年前に進出した。

しかし、製品の製造方法は大変難しく日本の技術を100%必要とした。したがって、社長(総経理)、工場長だけでなく、製造部長、技術部長、営業部長なども日本人が務めている。

日本人部長は3年で交代

R社の製品は特殊で製造困難である。また、中国では稀少な製品であり、高くても売れている。したがって、原価が高くなるのを承知の上で社長以外の、工場長、製造部長、技術部長、品質管理部長、そして営業部長は歴代日本の親会社から出向派遣している。

出向任期は原則として3年間。したがって、創業して10年のR社は既に平均4代目の部長を迎えていることになる。 部下は当然、全員が中国人。

中国人社員の心情は、上司である部長が歴代日本人であり3年ごとに交代する姿を見ていて如何なものであろうか?

@ この会社では、いくら頑張っても副部長か課長までしか出世しない。

A この会社では、中国人は下に見られている。

結果は、将来性のある有能な社員は早々と見切りをつけて辞められているのが一般的である。

管理(人事・財務)部長は中国人だが

中国人が唯一部長となっているのは管理部長である。

管理部とは人事課、総務課、財務課を管轄している部である。すなわち、ヒトとカネを管理している部門である。中国の人事と財務は特殊だから中国人の専門家に任せ、日本人はモノ作りに専念したほうがよいだろうと言う判断である。しかし、R社の歴代社長は管理部長に対して放任していた。いくら苦手な分野でも社長はヒトとカネを管理する管理部長を放任してはいけない。今は目立った不正疑惑は無いが、このままでは「日本人はどうせ分からないのだから」ということで、将来、不正が起こる可能性が高い。

T社長は、過去の社長とは手のひらを変えて、決裁審査や諸財務諸表への署名は慎重にし、質問を必ずすることとした。質問を続けることにより実務能力も上がるが、最大の効果は「今度の社長はヒトとカネの管理に関心があるな」と思わせることである。仮に不正の芽が出かかっていてもそれは自然に摘み取られる。

ヒトとカネに無関心な日本人

経営の3大資源といわれるのは、ヒト・モノ・カネであるが、R社では、日本人が直接管理しているのはモノだけであるのはどうしてだろうか?

たとえ直接管理していなくても関心は持つことが出来るが、皆さん「それは管轄外だから」、「中国の人事管理、財務管理は特殊だから」と言って手も口も出さない。

R社は日系企業によく見られるように、親会社から日本人が二階級特進制度で出向している。すなわち、親会社では係長か主任クラスの監督職が課長を飛ばして部長という管理職で出向している。出向にあたっては、残念ながら管理職としての教育は受けていない。

したがって、難しいモノを如何にして作るか、モノの品質を如何にして上げるか、如何にしてモノを売るか。それだけに任期の3年間を集中している。中国と中国人に慣れてモノ作りをするのには3年はかかるだろうから、ヒトとカネに無関心なことは致し方ないといえる。

社長は工場長ではない

T社長は赴任して半年である。上海赴任の前は広州の子会社社長をしており、上海子会社歴代社長の中で初の経験者出向である。以前の社長3人は日本では製造関係か技術関係の課長クラスでありヒトとカネの管理はあまりしていなかった。したがって、中国に出向赴任しても他の部長連中と同様にヒトとカネの管理は不得意である。

結果は、管理部長からの決裁依頼事項に関してはメクラ判、メクラサインが多かった。

社長は経営者である。モノ作りを任された工場長ではない。経営者である以上はヒトとカネに関心を持ち、慎重に決裁しなければならないのは当然である。逆に言えば、そこに重大な関心を持ち管理しなければならないのが社長である。

ヒトとカネの管理を放棄するということは経営放棄である。

技術移転・指導と管理は別物

工場関係(製造・技術・品質管理など)の出向者は、初期においては直接モノ作りに関わっていたが、徐々に技術指導や指導後の監査・確認業務が中心となってくる。それらの業務は日本で監督職だった者でも務まる。しかし、数十人数百人の部下を抱えての管理業務となれば未経験者では無理である。もちろん、期間が経てばこなせるようになるが、その修行のために出向しているのではない。

管理監督業務専門の中国人を雇い、早く移管すべきである。そして日本人出向者は組織の長から外れて、アドバイザーや顧問として指導や監査業務に徹すべきである。

しかし、部門の長から外れて権限が無くなったからと言って日本人出向者の責任がなくなることは無い。下記に徹すべきである。

○ 失敗したり問題が起きたりすれば、指導が悪いと言うことで出向者の責任。

○ 成功したら、管理をしっかりした中国人管理者の成果。

この姿勢を続けている限り、例え権限が無くても出向者が尊敬され、指導効果が上がることは確かである。

以 上