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作成年月日:2015年5月7日

海外情報プラス

海外情報−中国4月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
分野タグ:人事・労務、異文化、その他

会計処理は誰のためか

上海に現地法人を設置する予定のS社のA氏が、中国の会計について学習したいと来られたのでご指導した。 中国の会計は日本と違って難しく特殊だと聞いているが、何所が特殊なのかということが最も強い関心事項であり、何所がポイントかというのが主な内容。

中国の会計は増値税を意識し過ぎ

A氏が事前に聞いている中国の企業会計は、特殊であって難しく、日本の親会社が監査しても問題点を掴み難い、というものだが本当だろうか。

中国には日本に無い「増値税」という税金がありそれも17%と高率であるため、会計が特殊になっていると言われている。増値税とは、文字通り企業内で増えた価値に対してかかる税金である。仕入れた材料が50円であり、それを加工し製品化して150円で販売すると、増えた価値は100円、これに17%即ち17円の税金を支払う必要があるわけである。

実際には仕入れた50円の材料費には増値税の8.5円を加算して材料業者に支払う。そして150円で販売すると売り先からは150円に対する増値税として25.5円を受け取る。そして税務署に納める実際の増値税は、売り先から受け取った25.5円から材料業者に支払った8.5円を差し引いた(還付した)17円である。

この増値税を正確に計算し、支払い漏れや還付漏れが無いように、ということで会計担当者が気を使って、会計を分かりにくくしているのである。

誰のための会計報告か

中国会計が分かり難いのは、前述のごとく増値税対策のみに注目した結果である。これは毎月の決算ごとに企業所得税とともに納税しなければならず、税務署の追求も厳しいことから税務署対策の財務諸表のみを作る会計担当者が多いのであり、したがって経営者や株主から見て分かり難い財務諸表を作っても、「これが中国の企業会計だ」と言い逃れているのである。

厳しい言い方をすると、多くの会計担当者の上司は税務官であり、社長ではないのである。

税務会計か財務会計か

財務会計は経営実態を正しく表し、原価計算は真の原価を表すものが必要である。 財務会計は、会計法に基づいて正しく財務処理をすれば、幾ら仕入れて、幾らの経費をかけて幾ら売ったから、幾ら儲けたはずであり、幾らの在庫が残ったはずだ、という概算と大きな相違はないはずである。正しい財務処理とは、モノが動いた、或いは発生した時に起票し財務処理(売買した、入出庫したなど)をその都度していれば(現物主義あるいは発生主義という)頭上で計算したものとの相違点は少ないはずである。原価計算も会計法に沿って行えば実態により近づくはずである。

そして、最も大事なことは経営者や株主にとって理解しやすい決算方法であるということである。したがって、決算報告書や会計監査はこれで行うことが法律で決まっている。

これとちがって税務会計は、如何に税金を正しく納め、正しく還付を受けるかということに力点が置かれている。したがって、それを正しくしようとすると発生主義ではなく領収書(中国では発票という)が発行された時点で起票し財務処理をする「発票主義」で決算してしまう会計担当者が多い。

だからモノが動いても、例えば売買しても未だ代金が動いてなく発票も発行されてないと売買したと記帳しないのである。モノが有っても無くなっても台帳には載せられないという現象が随所に起こり、分かり難い会計となる。しかも、不正の温床ともなるのである。

財務担当者はこの発票主義会計や税務会計をこれが中国の会計だと嘘をついている。 その方が楽だし、税務局からは叱られないし、日本人社長はどうせ知らないからである。

企業の会計担当者が、会計の本来の役割を忘れて手抜きをし、増値税対策のみをあまりに強化した為に、企業会計を分かり難くしただけである。会計法に基づき発生主義で行ない、発票による増値税対策は別のシステムで管理すべきである。だからといって会計担当を増員する必要は全くない。

本来の会計は日本以上に先進的

中国会計法(中国では会計準則という)は、国際会計基準に沿った極めて新しく、日本人にも分かりやすいものである。

社長は、会計担当者に中国会計法に基づき、かつ発生主義で会計をして財務諸表を作れと命令してください。

親子・親戚間取引は、移転価格税制で利益移転が難しくなった。財務・会計責任者は、中長期の、損益計画と資金計画の策定能力と節税能力、さらに収益向上へ向かっての提案能力が必要となった。単なる計算屋、納税屋では存在価値が無い。それだけなら街の記帳代行業者に委託すれば済む話である。

財務責任者の上司は、税務局長ではない、社長であることを示していただきたい 。

以 上