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作成年月日:2015年4月6日

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海外情報−中国3月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
分野タグ:人事・労務、異文化、その他

高学歴だから仕事ができるのか?

A社は、上海に創業して約18年、社員30人の中堅日系商社である。

T社長から社員教育についてご相談を受けた。A社は、教育の必要性は分っており、一昨年も教育会社に依頼して行ったが効果がないがどうすべきかというご相談である。社員教育では知識を教えるのではなく、その知識が何故必要かそしてその学び方や考え方を教えるべきだとご指導した。

高学歴の者ばかり採用する弊害

A社は、ここ3年以内に採用した者は全て大卒というように、高学歴の者の比率が高い。日系商社だから日本語能力が必要であることの理由はわかるが、専門学校卒業生でも語学力は充分カバーできる。急激に需要が伸びることに対応するため、安易な方法で即戦力を求めた結果である。

高学歴者の多くは、お坊ちゃま育ちでエリートコースだけを求める。しかし、エリートコースを歩める者は社員の10%もいればよいため、多くの者は挫折する。一方高校や専門学校卒の者は、学歴重視人事管理の日系企業ではなかなか出世できずこれまた挫折感を味わうことになる。結果、挫折したものばかりのヤル気のない集団となっている。

この状態から脱するには、学歴や年功・性別という属人的なものを重視する評価制度から、成果や実力重視の人事制度・賃金制度に変えるしか方法は無い。

しかし、18年も経ったA社の制度を変えることは古参社員の既得権を壊すことになり反発が大きい。それを行うためには先に意識改革をしなければならず、その手段は社員研修である。

人は考えさせなければ育たない

中国の若者の多くは、高学歴であっても細部まで教わらなければ出来ないと言う、或いは具体的に指示されなければやらない。それも結果論で「やろうとは思ったが、やり方を教わっていなかったので教えてくれるのを待っていた」という最悪の言い訳で済まされてしまう。しかも高学歴ほどその傾向が強いので注意を要する。その理由は学校の詰め込み教育の悪弊であろう。上海の学生は学力世界一であるが、自然科学分野でノーベル賞受賞者がいないことがそれを物語っている。

会社では、1から10まで全てを教えたら、いつまで経っても教えなければ出来ない人間になり後輩や部下は持てない。10段階なら最初は8までは教え9や10は自分で考えさせる。次は7や8も考えさせる。最終的に1を聞いて10を知る。即ち何かでヒントを得れば自分で考えて進める高級管理者に育てなければ会社の成長はあり得ない。

特にA社のように商社であれば、極めて範囲の広い仕事であり、最終的には一つの課や部門が独立会社のような重い責任を負うことになる。いちいち細かい命令や指示など出せないし、細部まで指導する暇もなく、現場での判断力が大きく期待されている。

自ら考えて自ら行動する者を育てなければならないのである。

学ぶ姿勢、やりぬく姿勢を育てる

社員に、特に管理監督者には教えを待つのではなく、自ら学び教えを請う姿勢を身につけさせない限り会社の成長はあり得ない。仕事の流れも同じく、指示命令を待たず自主的に仕事を創り行動する姿勢が求められる。そのためには会社及び部門の目標や理念が固まっており、そこへ向かうべくベクトル合わせが出来ていることが前提条件である。

それができない場合は、その都度何でも声高に指示命令を連発しなければならず、結果確認も命令者がしなければならない。結果が良いか悪いかは命令者の命令方法の良し悪しだけで決まってしまうという最悪の方向に向かうこととなる。

ベクトル合わせが出来て、自主的・主体的に行動する精神が養われている会社の社員は自ら学び、自分の目標を設定しそこへ向かってくれるものである。自らの意思で自ら立てた目標に向かった者は最後までやりぬく意志が強い。それはどこの国でも同じである。

社員教育は日本以上に重要

企業経営に「上有政策下有対策(上に政策あれば下に対策あり)」の精神が蔓延し、直ぐに安易な方向に流れがちの中国においては、日本以上に熱心に教育し、自主的・主体的な行動ができる者を育てる必要があるだろう。

そうすれば、自己啓発意識も芽生え自ら本を買い通信教育も受講するようになるだろう。それに加えてそれらに人事制度的に支援策や評価システムで支援すれば完璧である。

今の中国で第一線に立っている者は、80年代90年代に生まれたいわゆる「80後、90後」世代であり、文革二世である。文化大革命中に思春期や青春期を過ごした世代の多くは「ものいえば唇寒し」で過ごし何も考えないし、躾も放棄を余儀なくされた。そのジュニアには苦労をかけまいと莫大な教育費をかけ、アルバイトもさせない。しかし、家庭での教えはしないし、出来ない。その環境で育った世代を第一線で使っているのが日系企業である。

社会人として、プロとしての教育は、企業がする以外どこにも期待できないことを認識すべきである。

以 上