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作成年月日:2015年1月8日

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海外情報−中国12月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
分野タグ:人事・労務、その他(企業経営)

日系企業再建は人材育成から

上海郊外のT社は、特殊な機構部品を製造販売する会社である。

年末に社長(総経理)のY氏と意見交換をした。昨今の円安・元高状態で材料費の値上がりが激しく、顧客からの値下げ要求も強くなっている。値下げに応じなければ顧客も困り日本へ帰らざるを得ないと言い始めており、事実段階的に引揚げ始めた顧客も出てきた。一方で人材採用は年々厳しくなってきた。特に地方からの出稼ぎ労働者の減少は激しい。

その様な状況で、現地法人経営について如何にすべきか議論をした。

結論は、人材育成を強化し、市場開拓を含めた一層の現地化を急ぐべきというものであった。

流動人材減少傾向継続

今年も、市場における人材不足は続く。 大きな原因は、地方から沿岸部へ出てくる労働者が減ったこと。 地方からの労働者は何も単純・肉体労働者ばかりではなく、ホワイトカラーも同じ。都会育ちの労働者も技能労働者や製造業へ行きたがらない。これらの事情は各メディアで報道されているので割愛するが、この傾向は今後も変わらない。 過去に日本がたどった道と同じ現象であり、しかもそれが一層強くなっている。

日系企業の悩みは、この一般論だけでなく、人材から嫌われているからである。何も反日思想からでは無い。日系企業独特の人事労務管理方法が嫌われているからである。

日系企業独特の人事労務管理

中国において日系企業が嫌われている管理方法は次の3点である。

@年功序列型人事制度の傾向が強い・・・日本の古い制度を持ち込んで成功するはずは無い。例えそれを少々変えても、年齢や学歴、勤続年数などの属人的制度が強く、若者は失望している。

A出世の天井が見えている・・・部長以上のポストは全て日本から出向者が握っている。出向者が帰任しても、直ぐに代替者が着任し、中国人はいくら優秀でも副部長止りだ。

B現地法人の裁量権が小さく、親会社の発言権が強い。

T社は、@の人事賃金制度は変えたつもりだが、AとBについては未だその傾向が強くY社長も気になっていた。

中国系・欧米系企業の採用と教育活発化

日系企業に元気が無ければ、他の外資系企業および中国系は張り切る。しかも、元々中国に進出した動機が「中国で安く作って本国に持ち帰る」ではなく「中国の大きな市場を狙う」というのが欧米系企業の実態。本国の景気が悪くなって、慌てて中国市場に活路を求める企業とは強さが違う。

したがって、日系企業で育てられた優秀な人材は幾ら高給でも欲しがり、求人が活発化している。そして、さらなるレベル向上と定着化を図るべく、(日系企業と比べて)莫大な教育予算をとっており、一部の教育会社には、欧米系および中国系からの教育事業が殺到している。

それも、日本伝統の監督者訓練(TWI)、管理者教育(MTP)や5S運動の教育訓練である。かつての、日本の高度経済成長を支えたこれらを、日系企業ではなく、他国系企業が見直し人事制度に組込んで一層の成長を図ろうとしているのである。

日系企業に、その教育を期待した若者は期待外れに終わり、それをしてくれる他国系企業に移動がなされている。 これは、日系企業にとっては脅威と言わざるを得ない。

対策は人事制度と社員教育の充実

前記各課題に対する対策は明確。今年こそ原点に戻って、成すべきことをするだけだ。

第一は、人事・賃金制度の充実。残って欲しい優秀な者を残し、どうでもよい者に去ってもらうためには避けられない。

努力した者、能力の高い者、それらの逆の者と如何に大きな差を付けるか、不当評価だと訴えられずにどう実施するか、これらを解決できる人事・賃金制度を構築し、公開し、訓練して公平に行う必要がある。

第二は、社員教育の充実

「中国人は直ぐに辞めるので教育しても無駄だ」とも聞くが、教えなければ何もできない。優秀でない者は教えることにより変わり、優秀な者はさらに伸びて本人も満足する。過去の教育経験では、中国は日本よりも教育効果大である。労働者の教育への期待度が大きいからである。人材が就職先を選ぶ基準には、必ず「社員教育の充実」があることを認識すべきである。

一方で、何を教えてよいか分からないとも聞くが、社長の教育熱意さえあれば第一段階はパスできる。最初に行うことは、経営理念の共有化と幹部意識の高揚だろう。

T社は、以上により社員のヤル気を引出し、新たな市場へ打って出る覚悟を決めたのである。

 

以 上