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作成年月日:2014年11月8日

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海外情報−中国10月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
分野タグ:人事・労務、異文化、その他(企業経営)

中国の副社長とは?

先日、上海で開催されたOVTA公開講座で私が講師を勤めた時の話題。

中国での人事労務に関して「これだけは知って欲しい人事労務の基礎知識」というタイトルで、あるべき姿、留意事項について事例を交えながら約2時間半にわたって解説した。休憩時間中に参加者A氏との会話で愕然とさせられたが、これが日系企業の現実のようである。

公開講座テーマ:これだけは知って欲しい人事労務の基礎知識

講座内容: @ 社員教育の重要性  A 人事・賃金制度の重要性 B 労使関係の重要性、

その他 中国に赴任して未だ日の浅い人を対象として、人事面を中心に幅広く勉強していただいた。

この中で、日系企業の課題を説明した。

若手人材に不人気な日系企業

日中問題に関係なく、ハイテク日系企業は人気が高かったが、年を経る度にその人気が凋落してきた。主な理由は次の表のとおりである。公開講座では、この事実を自覚して現地法人の経営にあたっていただきたいと訴えた。

 

〜中国の欧米系企業と日系企業の経営方式比較〜

欧米系企業

日系企業

現地法人の
位置付け

親会社からの独立を是認し、基本方針と事業計画を定めたら現地に任せる。設立の目的と目標、計画に沿った経営であれば干渉しない。

親会社が、子会社の独立した行動を嫌がり、細部まで報告を義務付け、指示を仰がせる。経営理念すら親会社のそれを押しつける。
設立目的と目標が不明確。

経営者派遣
方法

経営者として最適な人選を公募も含めて行い、徹底的に任せる。成功すれば高額ボーナス、失敗すれば解雇の契約方式。

社員の中から人選。
原籍復帰を約束された出向が原則であり転籍ではない。
派遣者の大半が管理職であり、経営未経験者。

現地管理者
活用

現地法人では、徹底的に現地人を管理者・経営者に活用する。
抜擢人事は当然。

現地化が遅い。日本人管理者が重要ポストを握り、現地人に任せない。現地人を採用しても、数年の実績を見てから権限を委譲。

人事・賃金制度

仕事別賃金が主体。年功は一切考慮せず、入社時から仕事と賃金が明確になっている。
中国の求職者意識と合致している。

賃金制度・人事制度がない。制度があっても不明確或いは日本的な制度移転が多い。仕事と賃金を入社後1〜2年見てから決めようとしており、社員の不満多し。

教育制度

目標管理制度、業績管理制度が普及しており、その為の基礎教育システムあり。

人事制度自体が不明確なため教育制度も不明確。
OJT教育という名目での放置が多い。教育予算も少ない。

私が愕然とした、A氏との会話内容は下記。

赴任されたのはいつですか?

・・・10か月前ですが中々慣れず困っています。

中国と中国人に慣れるには数年かかりますよ、ところでどんなお仕事ですか?

・・・人事と財務を見ていますが、勉強することが多いですね。

ということは行政管理部長で赴任ですか?

・・・いいえ副総経理です。

では、人事・財務だけ見ていたのでは職責を全うできませんよ。

副総経理とは副社長ですから経営者ですよ。

・・・・エーっ!!それなら私には到底務まりませんよ。私は係長までの経験しかありません。

日本の親会社は、A氏を子会社の副社長として、すなわち経営者として教育もせず赴任させているが、与える職位は名目だけでその権限と責任を赴任者に与えていないのである。 ご本人も経営者として赴任しているという自覚がないため、経営に関することは勉強もしていない。

副総経理(副社長)も経営者である

中国では取締役のことを「董事」と言い、会長を「董事長」、社長を「総経理」と呼び副社長のことを「副総経理」と言う。したがって、副総経理も経営者である。

日本とは異なって、董事長(会長)が名誉職では無く、文字通り会社の代表者であり、権威が高く、相対的に総経理(社長)の地位が低い。しかし、総経理が経営者であることには変わりなく、その責任と権限及び任命方法が「会社法」で明確に定められている。副総経理も同様であり、任命も解雇も総経理の一存ではできない仕組みとなっている。

赴任させる側もした者も経営者の自覚が無い

日本の親会社にその自覚は無い。

合弁会社の場合、出資比率に応じて、日本側が会長と社長を出し、中国側が副社長を出し、社長と副社長が常勤するケースが多い。しかし、出された社長にその自覚がなく「自分は経営のことは分らない、人事や財務も分らない、だから副社長にお任せだ」と言われる社長がいる。しかし、その会社は悲劇、数年後に破たんする可能性が高い。

合弁会社でなくても社長として出向派遣させる者に、経営経験の無い単なる部課長を選ぶ会社が大半である。したがって、副社長には管理職としての経験すら無く、係長などの監督者を任命して派遣することが多い。しかも、経営者としての教育・研修しないまま送りだしている。中には、中国語や中国の習慣などを教えてから出す企業もあるが、経営者としての教育は疎かにしている。

当然、任命されたご本人も経営者としての自覚がないまま赴任している。 赴任してから、これでは会社がおかしくなると気がついて学習を始めた方は(時間はかかるが)何とかなる。しかし、A氏の場合のように、10か月も経ってまだ自覚していない方が多いのである。

中国人社員から尊敬されない日本人経営者

会社の最高権力者は会長ではあるが、社員から見れば、社長がそれであり、その次任者が副社長である。日常見られ、日常接している経営者が最も重要なわけである。

その社長や副社長が、実務についてはうるさく言うが経営判断が必要な事項については全く疎く、親会社に放り投げていたらその会社はどうなるだろうか。

社員から尊敬されないのは当然である。 優秀な中国人は、憧れの会社であっても経営者が尊敬できないと分かったら直ちに去る。

残るのは、その素人経営者を悪用しようという者か何処にも行けない者だけである。 そんな会社が儲かる筈がない。 日中関係が微妙な現在であっても、莫大な市場を持つ中国は無視できない存在であることは変わりない。

中国できちんと経営し儲けるためには、それなりの人材を割くべくだろう。

以 上