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作成年月日:2014年9月8日

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海外情報−中国8月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
分野タグ:人事・労務、その他(企業経営)

儲からない現地法人の悲劇 続き

前号において、上海郊外のS社(日系部品製造会社)を視察した結果、次の結論となった。今号はその続きを報告する。

『会社を近代的な生産システムと手法を導入し、人事賃金制度を能力主義に変えようとすれば、既得権を得ている永年勤続者の猛反発を受けることは間違いなく、下手をするとストライキが起こる恐れすらもある。まず、管理監督者の大部分が会社をあるべき姿に変えることに積極的に賛成し、行動に移ってくれるように意識改革のための幹部研修からスタートすべきである。』

これにはY社長(総経理)も同意したが、親会社の承認を得られず、1ヶ月経った今でも結論が出ていない。

幹部の意識改革をはかる研修から

幹部研修の前に、全社員を集めて、「会社を変える必要があり、そのためには皆も変わって欲しい、その代表として幹部諸君の研修を行うので協力を頼む」と、宣言とお願いをすることも取り決めた。

幹部研修は、月に2回、2週間おきに半年間繰り返し行い、身体に染み込ませる。 研修内容は、一般的な管理者研修コースを50%とし、残りは演習問題とした。これにより、行動を変えさせ、行動しながら自分の仕事を見直し、組織・会社を如何に成長させるかという方向にベクトルを合わせることという内容で合意した。

これで、意識が変わったら人事賃金制度を変えて年功序列型から能力実績主義に変える手順としたのである。そうしないと、受注単価はたいして変わらないのに労務費だけは確実に毎年増えると云う、過去の悪い流れを断ち切れないという危機感があった。

研修の決済権限が現地法人に無い!?

Y社長は、さっそく親会社人事部へ「幹部研修の実施」ということで稟議書を出した。董事会(取締役会兼株主総会)の決議が必要だと云うことなら理解はできるが、何故親会社に稟議書?、S社の定款には研修実施の権限(というよりも義務)は社長にあることとなっているのに不思議な現象である。これは、定款が有名無実なものであり、日本の子会社管理規程と習慣に従わされていることになる。

定款を無視する会社はコンプライアンス無視の会社になる

会社定款を無視し、親会社のルールを押し付けるような子会社管理をする国は日本だけであろう。会社定款は国でいえば憲法の位置づけとなるものである。これを守らないと云うことは、会社が率先して会社ルールを守らないと云うことであり、社員が就業規則違反をしても罰する権利は無くなり、無法の会社となるであろう。

社員研修は日本で不要でも中国では必須事項

日本人には、自己啓発の習慣があり、後輩は先輩の背中を見て学ぶようにしつけられている。また、先輩も後輩に惜しみなく指導しノウハウを伝授しているのである。したがって、改めて集合研修をしなくてもある程度は経営できるのである。(ただし、新たに監督職や管理職に就く時は必要だと多くの企業は認識し、その教育をしている。)

しかし、中国人には、日本人では常識の自己啓発の習慣は大部分が無く、教育は会社がするものと認識している。先輩も命令しない限りは後輩に教えない。自分のノウハウは絶対に教えないのである。

したがって、これを打破すべく、中国系企業や欧米系企業では日本産業訓練協会編集の監督者訓練法の教育が猛烈にされている。特に「人の扱い方」と「仕事の指導法」、「改善の仕方」の教育は多くの企業で取りこんでいる。

日本の訓練法でありなら、残念ながらそれを社内に取り入れる日系企業は少ないようだ。

日本企業は特に中小中堅企業では、日本でさえも社員研修制度が少ないのに「すぐに辞める中国人に研修しても意味がない」という姿勢が強いようだ。しかし、労働者の就職先選定基準には「教育研修制度の充実している企業」が上位に入っており、日系企業はその点でも人気が低い。中国では、教えなければますます労働者からは見放される企業となり、優秀な者から辞められることを覚悟しなければならない。

過去の習慣どおりに経営していたのでは消えるのみ

S社社員の半数以上が10年以上の永年勤続者であり、会社からの解雇(契約解除)を待っている者が多い。それは会社から解雇通知を受けた場合は経済補償金(退職金に相当する)を受け取れるからである。それらの者は、会社をよくしようという考えはなく、会社に支払能力がある内に人員整理を実施させ多額の退職金をもらうことしか考えていない。

しかし、定年まで数年の者も多く、安易には解雇できない。定年まで5年以内の者は事情が無い限り解雇するなと、法律で縛られているからである。

もちろん、生活上の問題から解雇反対の声もあることは確実であり、労働者側は一つには纏まっていない。

管理監督者も、優秀な永年勤続作業者から選ばれており、管理能力がかわれての登用では無いし、管理監督者としての教育は一切していない。

昔の日系企業、特に労働集約型企業の場合は、永く勤めることが美徳であり、会社のよき資産でもあった。しかし、適当に新しい血を入れて新陳代謝もすべきである。高度成長を継続できた時代はまだしも、成長が止まった現在では新陳代謝を図れる能力主義的人事制度を導入すべきである。

教育をしない限り会社改革はできない

日本では管理監督者が中国子会社に出向すると、二階級特進し高級幹部か経営者として赴任するケースが大部分である。しかし、その地位に見合った教育はしていない。しかも、大半が3年〜5年で帰任してしまう。中国と中国人に慣れ、会社経営がやっとできるようになったら帰任。これでは何も新しいことは出来ず、前任者のあとをなどるだけで精いっぱいである。

中国の経済はまさに高度成長期、毎月のように経営環境は激変しており、それに合わせて会社も変えていく必要があるが、日系企業にその力は無く、気力も無い。

1990年代・2000年代では、中国でもトップ企業だった日系企業も今では続々と落ち込んでいる。過去の習慣や日本の硬直した規則に縛られた企業は消えるしかないことを自覚すべきであり、それでは株主に申し訳ないと思っていただきたい。

 

以 上