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作成年月日:2014年1月7日

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海外情報−中国12月分

作成日:2014年1月7日
作成者:中国 上海 佐藤 忠幸

騙して社員代表者組織設立を迫られる

天津市のS社から、地方総工会から強制的に工会費を払えと、嘘の脅しで工会設立を迫られているのをどうすべきかとの相談があった。

日本で言うところの労使関係は、過去の中国には無く、やっと現在構築中といってよい。したがって、企業別工会の上部団体である地方総工会や地方行政当局でも労使関係を真に理解し、指導出来る者は少なく、組織率を高めるため地方では好い加減な勧誘方法が今でも続いている。

工会は日本の労働組合とは異なる組織

工会とは労働組合のことだと訳している方がいるが、日本の労働組合とは全く異なる労働者組織である。

労働組合とは、団結権・交渉権・争議権のいわゆる労働3権を保障され、企業や政府とは独立した組織である。 工会は労働3権のうち1つか2つしか無いであろうし、企業からも独立してはいない。法律で企業が労務費の2%を工会費として工会に拠出することが定められている。

さらに日本で問題となった労組専従役員の賃金は、工会では企業が負担することを定めており、独立性は保てない。法律では、その他に規制や指導が多くあり、政府や企業に逆らうことは難しく、企業の発展成長に協力することが義務付けられている。

という訳で工会は、日本だけでなく先進国では労働組合とは認めらない別の特殊な組織である。逆にいえばきちんと指導し育てれば企業にとってよい協力者になることは間違いない。一般的には形式的に工会はあるというだけで、育てていないため、労働者も頼りにせず工会の存在を無視した山猫ストが後を絶たないのである。

工会を作れば工会費として労務費の2%を拠出

中国政府は2008年の労働契約法施行を前にした2006年から2007年にかけて、工会の組織率を高めるように地方政府に指示し地方労働局と地方総工会が共同して企業に圧力をかけて強く勧誘した。中には、勧誘手段として工会法で定められている工会費の企業側拠出金(労務費の2%)を集め始めた地方もあった。

「工会があろうとなかろうと工会費として労務費の2%を拠出する必要があり、工会を作ればその内の60%を戻してやる」との虚偽の説明。

ご承知のように、法律(工会法)では逆。

工会を作れば、企業が労務費の2%を工会に拠出し、その内の40%を上部団体へ上納することとなっている。先取りして戻すなどは違法行為であるが、これに騙された企業は非常に多いが実情。このような姑息な勧誘が長く続くわけが無いが、労使関係後発の天津では今頃これをしているのである。経費不足の上部団体からの圧力であろう。

方便による工会勧誘に乗るな

工会は、法律上会社側からの圧力で作ってはいけないことになっている。団結権の行使はあくまでも労働者の自由意思に基づかなければならない。地方の政府や総工会の意思で企業を動かし、労働者の意思を無視して作るべきものではない。 しかし、地方に設立した会社は地方政府の意向を無視しては生き残れない。様々な弊害を生じるからである。

中国の工会は有効か

既存の、形式的な工会では存在の意味がない、それが証拠に工会がある企業でも労働争議が頻繁に起きている。工会が実質的な労働者代表組織となっていなく、また労働者の問題を吸い上げていなく、相談相手にもなっていないからである。工会代表者が人事部長や工場長の企業では、当然それをしていないだろう。

労使協議制・労使交渉制を導入し、大会制度や職場集会を導入した真の労働者代表組織であれば、法的に過激行動や争議抑制を義務付けられていることも含めて、よきパートナーになり得ることは間違いなく、有効な組織であることは確実。

しかし、それを指導できるのは、健全な労使関係を経験した日本人だけ。前記のごとく、中国にはこのような労使関係は今始まったばかりだからである。

天津市のS社の結末

@工会の設立

S社は、設立後13年も経っているが賃金制度は当時の年功序列型のままである。それを近く能力主義に改訂を考えており、きちんと労使協議をしたいと思っている。会社の実力を考えたら、法定外の社員代表者組織を運営する実力はないと判断し、工会を設立することとした。 その代表者は、適正な者は永久に表れないので育てることとし、育つ可能性のある者を選ばせた。(選ぶのは全従業員であり、経営者ではない)

A地方総工会を引込ます

騙されかけた地方総工会には、相談したこと以外には口出しさせないこととし、工会設立後の上納金も、日本人比率が多いことを理由に、値引き交渉している。交渉不成立の場合は、さらに上部団体(収めた先が区の総工会なら、市か省の総工会)へ訴える、それでも駄目なら訴訟する覚悟もしている。 

以 上