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作成年月日:2013年11月8日

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海外情報−中国10月分

作成日:2013年11月8日
作成者:中国 上海 佐藤 忠幸

現地採用者の医療リスク

今回は、本年6月に報告した「中国駐在の医療リスク」に続いての報告。

10月に経営者を中心とするある異業種交流会で講演をした。世話人に依頼されて「中国生活における医療リスク」というテーマで講演したのである。

出席者の半数は中国現地採用の方か自営業であり、日本を出る時に海外旅行保険をかけていない。このため、大きな反響があった。

海外旅行保険は出発前に契約

海外旅行保険は、日本を出発前に契約し保険料を払わないと成立しない。

これが無保険での渡航が多いことの一因である。 親会社からの出向派遣者の場合は、本人が保険をかけるよりも会社が契約し保険料を払ってくれ、保険証だけを持たされて赴任する場合が多く、問題は少ない。

しかし、現地採用者や自営業として中国に渡る方は自分自身でそれをしなければならない。最初の渡航時は何がしらの保険をかけていたとしても、それから1年以内に帰国ができず、期限を過ぎても更新をできなく無保険となってしまう場合が多いようである。

急増する現地採用社員

現地採用社員とは、日本本社での採用および本社からの出向派遣ではなく、中国現地法人との直接契約であり現地法人直接入社の方のことを言う。

近年、本社の経費を抑えるためにこのケースが増えている。

また日系以外の企業が(例えば中国系や台湾系企業)日本人を採用する場合の大半が現地採用である。日本の高度な技術や管理手法を導入したい中国系大企業は競って優秀な日本人を採用している。また、日本人や日系企業を顧客とする、中国系サービス業(例えば、人材会社、不動産会社、レストラン、ITソフト会社等々)や下請け企業では、日本人を大量に採用している。

就職難の日本から、これらの職を求めて大量の若者が上海に来ているが大半が現地採用である。上海在住日本人は、10万人とも言われており、世界で最も日本人の多い都市である。その半数以上は現地採用社員だろう。

曖昧な労働契約

中国では2008年から「労働契約法」が施行され、急激に労働者意識が高まり労働者の権利も擁護されつつある。その根幹が、入社前に労使で取交される「労働契約書」である。

これ無しでは、企業は人を雇うこともできず、日本人は働くためのビザ(就業ビザ)も申請できない。

したがって、日本人であっても必ず「労働契約書」を締結しているはずである。ところが、「あなたの労働契約書では労働条件や福利厚生条件はどのように記載されていますか?」と聞いて答えられない方が大半である。すなわち労働契約書の存在すら知らない間に契約は締結され就業ビザが出されているのである。目先の賃金などの生活条件だけで安易に入社し、労働契約による労働者の権利擁護についての知識・意識不足の表れである。

その代表が、解雇条件であるがそれについては別途報告する。次に重要な事項が海外旅行保険の保障有無である。

海外旅行保険をかけるには毎年定期的に日本へ帰る必要があるが、

? 帰国期間の休暇は?

? 帰国往復費用は?

? 保険料負担は?

? 保険の保障範囲は?

賃金よりも大事な項目であるが、要求しない日本人が大半であるため契約書からは抜けている。

リスク管理は赴任者も現地採用も同じ

日系企業にとって、現地採用社員であってもリスク管理上は赴任者と同じである。

病気になったあるいは怪我をした最悪死亡したとなれば、現地採用だから、無保険だからと放っておけるものではない。社員として丁重に扱わない限り、他の社員から見切りをつけられるだろう。これが中国人労働者である場合は、各種社会保険で救済されその条件はこと細かに法令で決められているので、社会保険に加入している限りは問題ない。その対象外の外国人(昨年から一部の地域で社会保険に加入できるようにはなったが未だ整備不充分)である現地採用日本人は宙に浮いているのである。

結果的に無保険者の補償は、企業の一時的経費で賄うこととなる。重病人や死亡者が出た場合は中小企業なら経営破たんを迎えるほどの出費を覚悟しなければならないだろう。 少なくとも日系企業は、現地採用者であっても海外旅行保険は出向者並の待遇を与えるべきである。それがリスク管理であり、労働者にも安心感を与えることとなる。

海外旅行保険を補う民間保険

6月にも報告したように、中国では健康保険(中国では医療保険という)は、皆保険ではない。外国人は自由診療であり、その医療費は猛烈に高い。健康診断にもろくに行けない。

「私は現地採用者だから安くしてくれ」とは言えない。しかし、安い医院はそれなりにリスクがありそれも怖い。前記のごとく、海外旅行保険は日本を出発前に契約し保険料を払わないと成立しない。これが現地採用者に無保険が多いことの一因である。

このため、日系保険会社と健康・医療サービス会社の指導のもとに中国系保険会社が「民間医療保険」制度を作りだした。

日本でかける海外旅行保険に比べれば保障範囲は小さいものの、年々中身は充実してきた。その多くは、健康・医療サービス会社の会員向けであるので、関係するサービス会社やコンサルタント会社に問い合わせされたし。

 

以 上