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作成年月日:2013年6月9日

海外情報プラス

海外情報−中国5月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸

頼りになる海外医療サービスを

今月は、上海で実際に起きた事例を基に海外生活での、医療面でのリスク管理について報告する。 S氏は、3月に上海の大病院に検査入院した。何故・何の検査かということは省略するが検査項目が多く、通いで検査するには期間がかかりすぎると言うことで入院した。予定どおり4日間でほぼ検査終了し退院できたが、退院したその日に肺炎を発病し再度緊急入院した。更に心臓障害も併発し、ペースメーカーの植え込み手術とカテーテル検査が必要とのこととなった。しかし、様々な事情から日本での手術を選択した。無事に日本へ転院でき、手術も終え回復できた。この過程で、改めて多くのことを学んだ。

中国の治療費は外国人には高い

中国には日本のような皆保険制度は無い。医療保険制度は一応あるが、全国民の20%も加入していない。ましてや外国人には殆ど適用されない。(今年から一部の都市で外国人労働者も加入出来るようになったが)したがって、日本で言うところの「自由診療」が大部分である。特に高給取りの外国人の治療費はべらぼうである。 入院費は治療費別で1日数万円かかる場合もあり、風邪ひき程度の診察と投薬だけでも数万円から10万円必要である。

S氏が行なった心臓手術は、数百万円以上必要である。この手術は日本の病院でも高いが健康保険でできるため、3割負担でよいし、上限が抑えられるなど、その他の補助金もあって数十万円の支払いで済む。 このため、多くの外国人は自国で出国前に「海外旅行保険」をかけて自己防衛をしている。上海のような大都市であれば、保険会社と病院が提携しており、患者の自己負担がなく、病院から直接保険会社に請求される仕組みもできている。

もし、海外旅行保険に入っていない場合は、入院や治療の前に保証金を要求される。その金額は病状によって変わるが、入院や手術が必要なら数十万円以上の保証金を払わなければ門前払いである。日本に戻ってから健康保険に遡及請求は出来るが、まず全額を払うことが必要であり、その現金が無ければ、会社や知人への金策で走り回らざるを得なく、治療に手遅れが生じる危険があることを認識しなければならない。

中国の治療には限界がある

中国も大都会の医療技術は日進月歩で進んでいる。しかし、日本その他先進国に比べれば未だまだである。日本で日常的に用いられる薬も無いし、ペースメーカーのような高度な器具であると良いものが常備されていない。

しかし、もっと遅れていることはチームプレーと衛生観念である。担当医師と検査医師、薬剤師、栄養師、看護師などのチームワークおよびコミュニケーションが悪いことは極めて危険である。担当医師の技術がいくら高度であっても、薬剤師とのミスコミュニケーションがあれば大変なことになる。
例えば、S氏が入院した初日は「診察が間に合わないので日本から持参した薬を飲みなさい」との指示が出た。したがって日本の薬を飲んだら、直ぐ後に、別の看護師が中国製の薬を「これを飲め」と持ってきた。二重に飲んだら危険な薬であるので「既に日本の薬を飲んだが・・・?」と聞いたら、「医師に聞いてくる」とのこと、直ぐに戻り「飲むな」との指示変更が出された。もしS氏が聞かなかったらと思うとゾッとする。そもそも、S氏が罹った肺炎は(病院は認めないが)どう考えても院内感染である。

病人は飛行機に乗れない

そんな怖い思いをするぐらいなら日本で治療したいと思っても、飛行機に乗れなければ帰れない。熱があったり、セキがひどかったり、などの病人は航空会社に搭乗拒否されるし、体力的に問題があれば搭乗することは危険。故に、肺炎など伝染の恐れがある病気および心臓病など生命の危険のある病気は、感染防止や容態急変への対応が出来ない限り、病院は転院許可しない。ほぼ治療が終わり、危険が去るまで帰国は延期である。

それでも日本へ帰国し転院すべきと判断した場合は、医師と看護師同伴で、医療器具付きの救急医療専用飛行機で輸送できるが、ご想像どおり高額な費用負担となる。

海外旅行保険は余裕を持って

医療専用飛行機での転院なら病院も許可するが、少なくとも500万円以上、場合によっては1千万円以上必要である。海外旅行保険に入っていても保障額が足りなければ不足額は個人負担となる。海外旅行保険は、死亡時の保障額よりも、医療費と移送費合計でいくら保障されているかが問題である。なお、医療費や移送費は1社だけでなく数社にかかっている保険を合算できるので、クレジットカードに付随している海外旅行保険なども利用すべきである。特にゴールドカードには大きな保障があるので調べていただきたい。

医療専用飛行機での輸送などは極端な例であるが、治療費も想像以上に高額である。不幸にして亡くなられた場合、ご遺体を日本へ運ぶことは容易ではなく費用も高い。

自分だけは大丈夫だと言って保険無しで渡航される人もいるが、中国では何が起こるか想定できない。万が一の時には自分が痛い目をするだけでなく、周囲 に迷惑をかけてしまう。保険内容をしっかりと確認し、余裕を持った保険をかけるべきである。それが社会人としての責任でもある。

相談できる機関・人をつかめ

S氏は、中国で13年間仕事をしている。13年も!という方が多いが、「たった13年で大きな顔をするな」という方もいる。特に医療や事故での対応となると、日々に新しい情報ばかりである。しかしS氏は、中国人および日本人に、医師や保険会社、医療サービス会社に知人や仲間がいる。このネットワークの活用で無事に生き延びていられるのだとS氏は言う。

仕事だけでなく、医療関係にも相談できる人を掴むことが肝要であるが、それがかなわなければ、医療サービス会社との契約をお薦めする。
自分は健康だから、自分は安全第一だから、という訳で何もしないのが周囲に迷惑をかける典型的パターンだということを自覚して欲しい。

 以 上