各国・地域情報

中国

作成年月日:2013年5月10日

海外情報プラス

海外情報−中国4月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸

日系企業だが中国企業である

2000年に中国上海市に設立されたT社は、100%日系独資企業のビル内装の設計と施工会社である。建設業は外資に厳しく資本金に比して営業範囲が与えられるため、ビジネス規模の割に大きな出資となった。 設立後数年は、日系企業の工場建設も多く、仕事は順調に入っており利益が出たはずである。しかし、創立以来終始赤字であり、投資額の回収どころではなく設立した意味が無い。そこで、親会社S社長から今後如何にすべきかとのご相談があった。

経営者不在

T社社長(総経理)は、日本本社で働いた経験を持つ中国人R氏。しかし、R氏は経営経験どころか管理経験も無い技術畑のため、当初は親会社のS社長が出張し実質的な経営を行っていた。数年経って後は、R氏に任せたが、財務および人事労務に関しては中国人幹部に放任であった。

R総経理もS社長も経営者としての自覚は薄く、経営数字を正確に把握していない。利益が出なくても、何故出ないのか、どう改善すべきなのかは、考えてもなく、経営者不在の状態が数年続いている。

現地法人を親会社の一部とみて経営に無関心

T社を訪問し、調査・聴取すればするほど経営に関して経営者が無関心であることが分かってきた。常駐経営者であるべきR総経理は、施工技術のことしか関心がなく、出資者代表であるべきS社長は、受注量にしか関心がない。すなわち、R総経理もS社長もT社を親会社の一部分の事業所との位置付けとしてしか捉えていなく、独立採算の経営数字には関心が無かったのである。
T社の決算数字は半期ごとには親会社へ報告されている。また毎月、中国の地元税務署に税務報申告が出されている。しかし、R総経理もS社長もこの数字は中国当局向けの形式的なものとしか考えてないため、詳細な点検・確認もせず受理してきた。

確かに、利益が無ければ企業所得税は不要であり、現地法人にとっては好都合であるが、その経営状態では親会社(投資者)には還元できない。利益が無ければ株式配当は難しいし、外国へ配当金の送金は許可されない。配当以外で外国へ送金することは、移転価格税制その他の規制により極めて難しいことを認識しておかなければならない。

受注(仕事)をとるだけではダメ

S社長は、受注さえ豊富にあれば利益は出るはずだとの認識があった。それは、バルブ景気時代の日本では通じたかもしれないが、今ではどこでも通じない。中国でも2000年当時は工場建設ブームであり競争相手も少なく、まともな経営をしていれば必ず利益が出たはずである。
しかし、いくら莫大な収入があっても、ルーズに莫大な出費をすれば利益は出ない。厳しい原価管理をし、厳しい出金管理をしなければ中国では経営できない。

日本の親会社はそれでも問題ないであろう。何故なら、社長が見ていなくても代わりに確認できる組織や役員が居り、仕組みが出来上がっているからである。
中国現地法人T社にその体制は未だ出来ていない。

仕組み・制度に関心をもて

T社の就業規則や労働関係諸規則がどうなっているかS社長に伺うと知らないとのこと。では、会社の定款は何が書いてあるかと伺っても知らないとのお答え。
前記のごとく、T社を独立法人としての自覚がS社長になく、諸規則は会社を作るため政府当局に届ける形式でしか考えていない為であるが、働いている社員は違う。定款をはじめ、諸規則・諸規定に基づいて働くのである。

T社では、仮に社員に不正行為があって解雇したくても出来ないだろう。何故なら、それの根拠となる就業規則の条文を会社が守っていなければ就業規則はないと同じだからである。

現地法人の経営理念・目標をつくる

中国現地法人の独立採算を目指せば、独立行動も許さなければならない。そのためには、経営理念・経営方針・経営目標を親会社と共有化しなければならない。もちろん、共有化と言っても現地法人独自のもので無ければならない。親会社の押し付けでは絶対に経営できない。

現地の風土と環境そして目指すものに合わせたものを、親子共同して作り上げる必要がある。そして、それを社員と共有化すべきである。この作業が大変なことであるが、これなくしては、社員と経営者の関係は面従腹背であり、報酬だけで繋がった関係ではまともな経営はできない。

中国(異国)だということを忘れるな

中国現地法人は、日本の資本で日本の技術や指導によって経営しているが、中国に存在しており、中国の法律・治世の下に中国人を主体として出来上がっている「中国企業」である。日本が投下した資本であるが故に「日系企業」といわれ、各種規制があるが「中国企業」であることには変わらない。故に、日本の子会社とは全く位置付けが異なり、独立行動を許さなければ中国では発展できず、それを出来る経営者を派遣しなければ経営不可である。

以 上