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作成年月日:2013年2月6日

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海外情報−中国2月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸

改善活動は賞金だけでは進まない

上海市郊外のD社は、操業開始後10年を過ぎた中堅機構部品メーカーである。2010年までは親会社の創業者が現地法人社長(総経理)を兼ねており、中国人管理者に経営の全てを任せていた。というよりも、放任してきたと言うべきであろう。近年経営が悪化したことから50歳代の中国勤務経験者T氏をスカウトし総経理を委嘱した。T氏は、早速、全面的な改革に乗り出した。しかし、改善活動だけは一向に進まなかった。賞金を上げたり、小集団活動もさせたりしたが効果が全く出ない。賃金高騰が続く中国では、改善なくして企業の存続は危ないと感じたT氏より、改善活動の進め方についてご相談があり、実態を調べた。

社内に管理図は一切見えない

まず、社内を見学したところ、驚いたことに数値で表された図表が一切無い。簡単なもの、例えば、部門別・月別出勤率などのグラフも無い。工場部門では、生産性や品質に関わる管理図も無い。すなわち「目で見る管理」をしていないのである。

これでは、現状を知ることが出来ず、改善の種も見つからないだろう。

データはあるが活用していない

出荷検査部門を見た。管理図が無いのは致し方ないとして、不良率データを見せてくれと言ったが直ぐには出ない。責任者に数字を聞いても直ぐには答えられない。さらに、不良率の推移を何処に報告しているかを聞いたところ、工場長には報告しているとのこと。製造課長および直接製造している班長にその資料を見せてくれとお願いしたら、それは貰っていないとのこと。総経理から品質が悪いので改善しろとは聞いているがどの程度悪いかは知らないのである。検査部門からデータを受け取った工場長は、当然製造部門にも渡っていると勝手に判断していたのである。

すなわち、検査部門にデータはあるが、何の為のデータであるかを理解せず、活用していないのである。製造部門も、自分たちが作った物がどういう品質なのか、すなわち現状を知ろうとしない。関心が無いところには改善は進まない。

改善道具を知らない

「目で見る管理」は、現状を関係者に知らしめ改善意欲を出させる一つの手法である。データを見易く、異常を感知させる為のものである。その道具として最も有効なモノが「QC七つ道具」である。一般的には、次の7種類の図表がそれである。

【特性要因図、パレート図、ヒストグラム、グラフ、管理図、散布図、チェックシート】

名称は知らなくても、日本人なら大多数の図表がそれであり、活用されていることはご存知であろう。 T総経理は、赴任した時にD社のほぼ全員が「QC七つ道具」を知らないことに驚き一応は教えた。しかし、活用方法まで教えなかったため、未だに誰も知らないと同じ状態である。

工場見学すると、一部に管理図らしきものはあった。しかし、よく見ると管理限界線が引いていない。管理図とは、ある数値計算して「この線を越すと不良が発生し易くなるよ」という警告が出たとみなし、予防処置を講じるための図表である。しかし、D社の管理図は規格線のみであり、予防処置どころではない。

最悪なことにこの管理図はファイルされており、関係者が常時見ることはできない。この状態は図表を改善の道具として考えていない。つまり「目で見る管理」も改善も知らないということである。

改善手法を知らない

改善は、職場全体の実情を知り、改善テーマを選ぶことから始まる。その為には職場の各種の数字が明らかになっている必要性がある。この一つの手段が「目で見る管理」である。

改善テーマが決まれば次には、その現状を詳細に把握し、目標の設定と活動計画を作り、その要因・原因分析をする。そこまでが分かれば、対策案を考えて実施する。

次には対策効果の確認をする。効果があればそれを標準化し再発防止をする。最後に、これまでの活動を反省し次の活動計画を作る。という循環サイクルを回すこととなる。

このサイクルが、一般的に「QCストーリー」という改善手法である。

D社は、この改善手法を知らない。これを知らずしては効果的な改善は進まない。

改善提案・小集団活動は形式だけ

D社のみならず、中国の日系企業の多くは改善促進策として改善提案や小集団活動に賞金などを出して推進している。しかし、上記各項を教えず掛け声だけの企業も多い。結果はその時期だけの形式的な改善で終わることが多いのが実情である。

何のために改善をするのかを知らない 中国で改善促進をするためには、目で見る管理で実態を分からせ、改善の道具を学び、改善方法を教えることは必須である。

そして、最も重要なことは「改善の必要性」である。改善が賞金のために行うだけでは効果がないことはお分かりだろう。

企業が限りなく発展成長し、競争力を維持し、結果として社員の賃金も上がる。この根源が「改善活動」であることを根気よく理解させなければならない。

これらは、全て「社員教育」で行うことは言うまでもない。

D社も、臨時教育予算を計上し、専門家を招き体系的に教育し始めた。

以 上