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作成年月日:2012年8月7日

海外情報プラス

海外情報−中国7月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸

親会社との板挟みで悩む中国現地法人社長

中国にある日系企業の社長(中国では総経理という)は、大多数が社員である部課長であり、経営者である取締役が赴任しているケースは極めて少ない。日本に作った子会社は「製造するだけ」、「売るだけ」という単機能の会社が多く、それと勘違いしているようだ。

中国にある子会社は、中国という異国で、中国の法律と習慣の中で中国人を主体として企業が成り立っている完全な独立法人である。

日本で管理者として部門管理をしていた者が、会社経営をするには時間が必要である。

赴任後の仕事は親会社向けばかり

上海にある日系事務機メーカーY社のM氏が、悩み相談に来られた。悩みの中心は「中国現地法人に赴任したが、現地法人のための仕事ができない。親会社向けの仕事ばかりだ、どうしたらよいか」というもの。

Y社の製品は、5年前までは中国でトップクラスのシェアを誇っていたが、ここ数年間で韓国勢にその座を譲り毎年減産が続いていた。その立て直しのためM氏が派遣されたのであるが、心配した親会社の各役員からの質問や問い合わせが頻発していたのである。定期的な報告書に対しても、各取締役から指示を受けた部長達から矢継ぎ早の質問が続いた。

「各」取締役というのは、営業・製造・技術・計画・経理・総務・企画そして海外事業部などである。
質問する方は、心配してのことで悪意はないが、質問される総経理はたまったものではない。赴任したばかりで中国も中国人も分からない。ましてや企業経営のイロハも勉強中である。M氏は製造畑の出であるため、人事労務や経理のことは全く分からないのに質問に答えるのは大変なことである。シェア奪還の使命に対して時間を持てず、親会社向けの仕事が過半をとなっていた。

中国会社法では総経理の任務重大

総経理とは、中国の会社法では次のように定められている。

「董事会(株主総会兼取締役会)にて決められた経営計画及び経営目標を達成するための執行責任者として、総経理一名を董事会にて任命する」

即ち会社を実際に経営する人、つまり社長であり、多大な責任と権限が総経理に集中している。また、各社の定款にもそれが明記されている。現地法人の社員の全てが、総経理とはそういうものだと見ており、その権威と尊敬される地位を求めているが、それを帳消しにしているのが親会社である。すなわち、中国では名目社長というのは通用しない。

 尊敬される総経理像とは次の3つである。
@ 尊敬される人格・人望
A 尊敬される業務遂行能力
B 尊敬される行動力と決断力

総経理にこのうち2つが欠けたら優秀な中国人幹部は退職する。赴任した日本人管理者に2つ欠けていたら無視される。親会社の顔色ばかり窺っている赴任者が尊敬されるわけが無いし、結論の先送りばかりしている赴任者に対しては面従腹背の関係になることを親会社は自覚すべきである。

しかし、現実の多くは必要要件を果たす時間も力も無く悩んでいる。

親会社は口出しするな、支援だけに

中国現地法人の経営環境は時々刻々と変わる。職場の状況も同じである。その場その場で、その時に対処し解決すべき課題が多い。それを逐一親会社に判断を仰いでいては手遅れが生じる。 前号も同様なことを報告したが、それは管理者の意識を高めて「いちいち総経理に聞く前に現場で判断をして処理をすべき、また問題が表面化する前に、現場でトラブルの芽を詰め」というもの。

総経理に対しても同じことである。子会社のことは子会社総経理に任せ、親会社は口出しせず陰ながらの支援に徹するべきである。 親会社の質問攻めでは、総経理の役目は果たせない。

質問や意見はゼロにはできないが、せめてその窓口は一本化すべきである。Y社はそのために海外事業部を作ったが、頭越しの質問や意見が飛び変わっている。

任せられる人を出せ、任せられるように学習機会を

以上のことを書くと、親会社取締役の多くは「あいつは企業経営のことが分かっていないのだから心配だよ。失敗してからでは手遅れだからね」とお答えになる。 心配するような者を何故任命したのか?心配なら何故ご自分が赴任しなかったのか?その者しか適任者がいないのなら(そうは思わないが)、徹底的に鍛えてから出すべきであり、赴任後も学習機会を作るべきである。

しかし、総経理の相談や支援をするコンサルタント契約の決済申請を、総経理が親会社に出して通ることは少ない。本来それぐらいの決済権は総経理にあるはずであるが、何故かそれを無視して却下されている。 親会社の最大の支援は金と知恵であろう。知恵は現地で吸収できるような機会を積極的に与えるべきである。支援もせずにとやかく言うべきではない。

以 上