各国・地域情報

中国

作成年月日:2012年7月5日

海外情報プラス

海外情報
作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
タイトル:幹部は、考えて考えて、考え抜け

 中国にある中小の日系企業でよく見られる現象は、中国人幹部に任せず、総経理(社長)自ら判断し指示命令を下すことが多いということである。トップダウンはスピーディであり悪いことではない。しかし、それは下から、幹部からの意見具申、提案があった上でのトップダウンでなければ幹部も育たない。そもそも、現場の問題には総経理は気がつかない。現場を掴んでいる幹部が、自らその場でその時に対処すべきである。

性格分析をしたら
 浙江省の日系企業C社を訪問し、幹部社員の性格自己分析を実施したところ、深刻な課題が見つかった。
 C社は、総経理(社長)が3月に交替し、現在はY氏であり、改革に乗りだしたばかりである。改革の一環として幹部研修を開始し、その中の演習問題のひとつで性格自己分析を実施したのである。
  性格自己分析は、ご存知のように様々な設問を読んで「YES:2点 NO:0点 不明:1点」などを自分で採点し、設問グループごとに集計して性格を判断するものです。
 設問は数十あり、それぞれを数秒間で読んで「YES」、「NO」を判断するのであるが、なかなか進まない者が半分近くいた。中には明らかにNOと答えるべき設問にYESと答える者までいる。すなわち文章読解力が無いのである。
  次に、自己採点した結果、自分の性格の中で、何が長所か短所かを掴んでもらい、長所は如何にして更に伸ばすか、短所は如何に克服するかを書き出してもらった。これが書けない者がやはり半分近くいた。
 聞いてみると、文字を知らないということではなく、文章が頭に浮かばないのである。文章力が不足しているということもあるが、自己主張ができないのである。

 これで幹部が務まるのか?
 少なくとも過去は務まっていたのである。

幹部を信用せず、考えさせていなかった
 C社幹部社員に、過去の業務の進め方を伺った。
 すべての指示・指令は前総経理から出ていた。会社設立当初は、任されることもあったようだが、幹部の判断ミスや対処遅れが度々あった。幹部といえども、既製の者はいない。幹部としての行動や職責を教えない限り、一人前の仕事はできないはずだ。しかし、中国人は自分を売り込むのが上手である。幹部としての職務は何でも出来ると豪語して入社するので、任せたが、結果は失敗が多く、中国人幹部を信用しなくなってしまった。
 このことから、前総経理が直接指示・命令することが多くなったようだ。
何でも指示を仰ぐようになってからの幹部は気楽である。考える必要もなく、レポートする必要もない。ミスは減ったが、考えて行動する幹部はいなくなった。

自ら考えて自ら行動する幹部へ
 会社の経営環境は時々刻々と変わる。職場の状況も同じである。その場その場で、その時に対処し解決すべき課題が多い。それを逐一総経理に判断を仰いでいては手遅れが生じる。         
 そもそも、課題の多くは表面化してトラブルとなる前に対処し、トラブルの芽をつむべきである。思考力が低く問題意識の薄い幹部では、その隠れた課題を発見できない。現場にいない総経理もとうてい無理である。
 結果、C社はトラブルの連続であり、赤字続きとなった。
 新総経理のY氏は、研修内容を大幅に変え「自ら考えて行動する」という幹部の初級コースから行うこととした。

YES,NOの答えをすればよい具申を
  C社の幹部は、総経理に対して「○○が起きました、どうしましょうか?」というのが習慣となっていた。考えさせなかったのであるから当然であろう。
  それを受けたY氏は、「君はどうしたらよいと思うの?」と答えることにした。それに対しては「総経理のご判断・ご指示にしたがいます」との答えが大半であるが、さらに重ねて「私の考えを言う前に、君の考えを聞きたい」と問いかけると、徐々にではあるが、考えるようになってきた。 
  T氏の目標は、「上司への具申は、YESまたはNOの印を押すだけで済むように、考えぬいたものである」余分な説明も解説も要らないのである。

 この目標に到達するには、数年かかるであろう。
  今までそのような習慣となっていたものを変えるには、時間がかかるだろうし、根気も要るだろう。Y氏は、幹部の姿勢・思考力を変えない限り会社の発展は無いと判断し、やりぬく覚悟を決めた。

以 上