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作成年月日:2012年4月5日

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作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
中国日系企業の課題(腰掛け社長)

 中国の経済成長は目覚ましいものがあり、世界中の一流企業が進出し厳しい競争をしている。それだけでなく、中国系企業も著しい成長をしており、怖い存在である。また、インターネットの普及により世界の情報が容易に入手できるようになった。
これらのことから、日系企業の存在価値が年々低下し、経営のかじ取りが難しくなっている。

 上海市にあるD社は、中国に10数社ある子会社を管理する中国総公司である。主に人事と財務を管理しており、子会社の社員教育は全てD社で行っており、子会社で研修する場合もD社が費用負担している。総経理(社長)は日本人であるが、副総経理は中国人である。

 3月下旬にD社を訪問し、社員教育について意見交換をした。社員教育の責任者は中国人副総経理T氏である。

D社の教育内容
  T副総経理から伺った、D社の社員教育内容は次のごとくであり、社員教育対象者は、中国人に限られている。肝心な、子会社の実状に合わせた会社毎の幹部教育をしていないことに大きな疑問を感じる内容である。

@ 主体は監督者教育
 最も熱心に教育しているのは監督者教育である。日本産業訓練協会が主催するTWI(監督者訓練方法)を指導できる公式トレーナーを各子会社に派遣して熱心に教えている。
 TWIには、JI(仕事の教え方)、JR(人の扱い方)、JM(改善の仕方)の3コースがあり、それぞれ2日間コースであり対象者も多い為、莫大な費用がかかっている。
 しかし、この教育の意義や内容を、監督者を使う立場の幹部に教えていないため、空回り気味である。

A 管理者教育は子会社単位では行っていない
 管理者教育は、全てD社の研修所を使って、テーマごとにまとめて行っている。
子会社単位では行っていないため、子会社による特殊事情は考慮されていない。また、子会社によっては、他の子会社に比べてまだ程度が低いという理由などで、管理者を研修所に派遣をしたがらない総経理もいる。

B 日本人は教育していない
 日本人赴任者は、総経理など高級幹部のみである。
D社に高級幹部の教育コースはないということと、赴任前に教育されているという前提にたっているからである。しかし、実態は赴任前教育を受けた者はほとんどいない。
すなわち、D社は上位者ほど教育不十分ということである。

中国人から見た日系企業の課題
 T副総経理は、日系企業の地位低下を嘆き、これを改善すべき方策を何処も取っていないことに憤慨していた。特に韓国系企業を追い越すには相当な荒療治が必要であり、期間もかかるが、その可能性はほとんど無いと嘆いていた。
T氏が指摘された内容は次の通りである。

@ 日本人幹部は日本しか見ていない‘
 日本からの赴任者は中国や中国人について勉強しない。
 それをしなくても人事評価者は日本人であり、支障がないからである。中国子会社に赴任する時は、二階級特進して係長クラスの者が部長、課長や部長クラスの者が総経理として赴任している。したがって、日本に数多くの上司がおり、(帰任後を考えて)日本への報告が最も重要な業務となっていることも、中国について勉強の必要性を感じていない要因である。

A 日本の親会社は過去の栄光にすがり付いている
 日本の過去の高度成長を支え、品質のよいことを売物としてきた、電子・電機産業は過去の栄光にすがりついている。
確かに品質は世界一かもしれないが、品質だけで売れる時代ではないことに気が付いていない。その国の事情に合致した性能とデザインを追求し、品質は安全性さえ保てば「そこそこ」でよい。商品(流行)寿命が3年の製品で10年ももつ必要はない。

B 日本の親会社はグローバル化していない
 日本では、グローバル化が叫ばれて数年経っているが、実態は昔どおりの縦割り社会であり、クレーム一つすら解決するのに時間がかかっている。原発事故処理の遅延によっても縦割り社会の問題点が見えた。
 縦割り社会で、グローバル化は不可能である。問題や課題が一つの部門で解決できる時代ではないからである。

C 日本人幹部は腰掛け赴任者である
 「これは言いたくないことであるが」、との前おきをしながらT氏は語った。
 日本人幹部は、源籍復帰を約束された出向で来ている。しかも数年の期限付きである。前述のごとく、二階級特進して赴任しており、日本に数多くの上司がおり、中国現地法人のことよりも帰任後の立場の方が重要視されている。
 このような期限付き出向者を、我々中国人は「腰掛け赴任者」と呼び誰も尊敬していない。中国人幹部は、他社からのスカウトに合えば直ぐに応じるだろう。
 しかも、幹部教育はおろそかであり尚更定着しない。

 中国人のT副総経理の話は、日系企業内部にいての実感であり、その憤慨ぶりは真剣であった。我々部外者が想像で語るものとは異なる。 親会社はそのことを肝に銘じて聞いて欲しいものである。

以 上