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中国

作成年月日:2012年3月5日

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中国の企業経営は社長の牽引力が鍵

 

 中国の労働者の賃金が急上昇していることは、ご承知のとおり。また、入社しても気に入らなければ直ぐに辞めるし、愛社精神を期待することもできない。 若い多様な思考の労働者を、如何に意識を結集し会社が向かう方向に合わせるかは、日本でも難しいこと。それを中国で行うには、社長がよほどしっかりした考えで、腰をすえて、強いリーダーシップを発揮しなければ不可能である。
 江蘇省の某市にあるN社は創業して8年、金属製品を作り日本へ輸出しているが、創業当初は儲かっていたが、近年は利益もあげず、親会社には貢献していない。この状態を改革させるべく、総経理(社長)を交代させ、中国のコンサルタント会社に依頼し、現状を徹底的に調査し問題点と課題を探った。
 調査結果は、下記のとおり多くの問題・課題が浮かび上がった。
 総経理を頂点としたピラミッドができていない、会社の経営方針が無い、幹部のベクトルが合っていない、立法の精神を無視した労務管理、などである。
 原因は、中国人幹部に放任したためである。幸いなことに、中国人幹部は誠実であり不正は犯していないが、総経理の顔が見えない(方向を示さない、引っ張らない)ため、「会社のためという名目」でお役所が許容する違法気味の節約を繰り返している。
 中国の企業経営は、中国人の幹部登用と活用は当然であるが、総経理が方向を示し、強いリーダーシップで引っ張らなければ会社はバラバラとなり、コンプライアンス無視となるという見本である。


調査結果概要

@ 経営理念・方針がない
 現地法人の理念と方針が無い。一部の幹部に、親会社の理念を聞いたことがあるとの話であったが、誰も覚えていない。会社の方針が無いせいか、全部門に方針が無い。一部の幹部に自分で作った方針があるが、それは部下に伝わっていない。
A 5S運動は形だけ
 5S運動が会社の諸活動の基礎であることはもちろんであるが、随所にポスターが貼ってあり、月間スケジュール管理板には毎週火曜日午後に職場パトロールをすると記載されている。しかし、5S運動の目的は誰も知らない。したがって、重要性も認識していない。現状は「忙しいからやっていない」、月間スケジュール管理板には行動予定として記載してあるがやっていない。5S運動は「暇つぶし」の運動ではない。
B 規則・規定類は公開していないし、内容にも問題があり
 規則・規定類の職場設置または社員への配布は一切していない。いつでも誰でも見られるようにすべきという義務は中国も日本と同じであり、法律違反である。 現行の就業規則は、日本的な雇用概念を基に作られており、作り直さなければならない。日本は「入社、退職または解雇」、中国では「契約開始、契約終了または解除」である。 その他の諸規定は、決定権のある機関で議論していなく、規定があるとは言えない。
C 工会(労働組合)活動がない
 工会は、会社の規則改定時の審議機関以外の活動はしてなく、全く意味が無い。 工会があることは知っているが、会長の氏名すら知らない幹部もいる。 労働者が不満を持った場合、現状は、上司にそれを訴える以外に手段がない。何故なら、工会の役員は会社組織の上司であるからである。上司に訴え難い問題は会社を辞めるかストライキなど実力行使をするか仲裁委員会に訴えるしかなく、極めて危険な状態。
D 会社組織上(命令系統)が組織図と合っていない
 配布および貼付されている組織図と実際の命令系統と異なっている。組織図の線は、指示命令および報告系統を表すものであり厳密でなければならない。
E 人事・賃金制度は違法性あり
 基本給を全員低く抑えて、残業単価を抑制しようという姿勢が明確であり、法律に抵触する恐れすらある。理由は、毎日4時間残業を強い、土曜日も出勤を強いているからである。 製造作業者は、ほぼ毎年全員入れ替わっているが、最近は3ヶ月以上続く新人は一人もいない。新人ばかりで仕事をすることは、能率と品質の低下をまねいている。 新人が続かない理由は、「きつい、きたない、仕事が長い、その割に安い」。
F コミュニケーションが取れていない
 総経理―幹部、その他上下左右のコミュニケーションは、形式的には取れているが実際は不十分。会議は頻繁にあるが、その全てが通達や報告のみの一方通行。 意見交換や質疑応答をする幹部会議らしきものはなく、相互の真意が伝わっていないようである。最も重要な経営方針や理念がないのは論外であるが、課題を含めて、トップから下まで「心」を共有化していなく、ベクトルが合っていない。
G 社員教育をしていない
 過去数年間、社員教育はしていない。 品質規格のための教育はしているが、幹部の職責を理解させ、行動を決めるための教育はしていない。ベクトル合わせと職責の認識は、集合教育でなければ不可能。 その他は省略。

緊急実施項目と概要
@ 幹部研修の実施
 幹部のベクトルを合わせることを最大の狙いとし、幹部の職責を理解し「言い訳」を排除する。コミュニケーション能力など幹部の必須知識の習得をしながら意識改革を行う。
A 人事・賃金制度の構築
 日本の職能資格等級制度を基本とし、職種別に構築する。さらに、日本以上に厳格運用し、信賞必罰を強め、年功的要素を排除する。人事考課との関係を明確にし、公平、公正に行い全てを公開する。 制度発足初年度は、移行処置および残業手当計算基礎賃金の上昇などで労務費は上がるが、2年目以降は一律昇給をしないことから労務費は抑えられる。さらに、残業の削減、定着率の向上による能率の向上、などを狙う。
B 新就業規則および労務管理関連規定の制定
 中国労働関連法の趣旨に沿った内容で新規制定する。規則・規定に表現されている労使関係も改める。全ての規則・規定は、実際の流れを忠実に表現し、運用の正確度を促す。
C 5S運動の本格実施
 どのような立派な制度を導入しても、運用するのは人である。その基本は「5S運動」である。これを理解させ、定着化させるには中国に合わせた進め方で行う必要がある。日本との大きな違いは、「しつけ」があるかどうかである。中国では「しつけ」教育をしながら他の4Sを指導教育しなければならない。
 5S運動は、綺麗にすることだと誤解されているが、もうひとつの大きな狙いは「財務体質の強化」である。不要な資産を整理し、再発の防止をはかることである。 その他の課題は、新総経理が実態をさらにつかみ、段階的に改善することとした。

以 上