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中国

作成年月日:2012年2月5日

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中国の5S運動推進のモデル

 「中国では、5S運動は無理だよ、○○は無理だよ」という話はよく聞くが、誤解である。当然、国が違うのであるから手法は異なるが、企業としてやるべきことはどの国でも同じである。逆に、どの国でもやるべきことをやらねば生き残れない。

 中国では、5S運動を定着させることが難しいと言われている事情は前号のとおり。
 5S運動の基礎をなす「しつけ」を徹底した中国の日系企業と、そこに学んだ日系企業の改善実態を前号に続いて報告する。
蘇州市のK社は、5S運動を推進したことにより業績も上げたことで有名であり、一方上海市のT社は、5S運動の推進が思うように出来ないため、T社幹部はK社を見学し学んだ。

5S運動を徹底して成功した企業の当初の実情
 K社は、2007年より5S運動を開始したが日本人幹部が躍起となっても思うように成果が得られなかった。
 そこで2008年に専門家S氏を招聘し、指導を受けた。
 S氏の観察結果は次のとおり。

  1. 総経理(社長)は、やる気があるものの、5S運動の必要性は分かっているが推進方法は知らない。
  2. 日本人工場長に任せたが、彼も知識不足。整理と整頓の区別さえ知らず、運動が空回りしている。
  3. 中国人幹部はやる気なし。真剣になっているのは日本人だけであり、直接多数の部下を抱える幹部が部外者では、運動を推進できない。
  4. 幹部が職責を理解・自覚していない。経営理念も共有していない。幹部の行動はバラバラであり、何か問題が起きても言いわけと責任のタライ回しであった。

 したがって、中国人社員は「今度の総経理も5S運動はその内に諦めるだろう」と、真剣に行う者は誰もいなかった。
 各所の掲示板にはスローガンや注意事項が掲示されていたが、それは形式だけで見る者もいない。 これは、残念ながら多くの日系企業の姿でもある。

5S運動の指導開始
 K社は、さっそく、S氏の指導を6か月受けた。
 中国の5S運動には、日本とは歴史・文化を含めて環境の違う中国に合わせた知識と推進方法を学ぶ必要があることから、S氏は、現場視察と改善方法の実務とを併せて、6か月の指導教育を行った。
 これにより、運動は軌道にのり始めた。しかし、総経理は、幹部の言動から継続性に疑問を感じ、また、総経理が変わればそのまま運動が終息するのではという懸念もあった。


幹部研修開始
 K社は、5S運動指導が終わるとともにS氏に幹部研修を委託した。
 これも6か月行ったが、主な研修内容は次のとおり。

  1. 企業の経営ビジョン・理念・方針・目標の共有。これは幹部のベクトルを合わせるための必須事項である。
  2. 幹部の、職責の理解と自覚。言い訳をなくする。
  3. 5S運動推進は幹部として重要な職責であることの自覚
  4. コミュニケーションの重要性と実務演習。
  5. その他、マネージメントに必要な基礎知識。

 いずれも、演習や討論を通じて身体で習得した。
 これにより幹部の姿勢は、5S運動は「やらされる」から「自らやり抜く」と変わり、業務改善も積極的に行うように変わった。最も変わったのは、幹部から聞こえていた責任のタライ回しがなくなったことである。


K社2011年の現状
 K社の業務改善は、研修で学んだ基礎知識とやる気で、日本の親会社の水準をはるかに超えた。
 5S運動は、整理の目的である在庫が激減した。
 整頓を徹底するためのシステムも進んだ。
 それらの基礎である「しつけ」は、学んだ基礎を進化させ、中国人幹部からの発意により「あいさつ運動」も開始していた。幹部約10名が、毎朝、正門前に整列し出勤する社員に声をかけ、出社する社員も自転車から降りて返礼をする。門前を通りがかる他社の人にも声をかけ、近所の有名会社となりTV取材まで受けた。
 あいさつ運動の後、全員で清掃を行う。清掃は文字通り、全員が箒と雑巾を持ち「掃き清める」を実践している。清掃は、しつけの基礎ともなっているのである。


T社の変化
 見ると聞くとは大違い、見るは百聞にしかず。
 T社幹部は、K社幹部が早朝より門前に並んで「あいさつ運動」をしている姿を見て、誰ということなく、その後ろに整列し参加していた。
 T社幹部は、同じ中国で、無理だと思っていた5S運動をそこまでやれるのか、やっている会社があるのだということを実感し、「よし、うちでも」と発奮した。
 T社の5S運動は、K社見学をきっかけに順調に進んだことは当然である。それをバネとして経営改善が進んだのも同じである。

以 上