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作成年月日:2011年8月

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名目管理者と実質管理者の二重管理

 

 天津市のK社は、 90%日本、10%中国系民間企業出資の合弁会社。
 きわめて特殊な化学製品を作り日本へ輸出するために1年前に設立され、年内に操業開始すべく工場建設など各種準備中。特殊な製品で中国政府の認可を得ることが難しいため、中国系民間企業と合弁会社とした。また、同様な理由で「総工程師」という肩書の者を置かなければ政府認可が得られない。「総工程師」とは、技師長的な存在でありその資格を得ることは容易ではない。したがって合弁相手から派遣をお願いした。
 合弁相手は、50年の歴史を誇る当業界の老舗であるが中小企業の地位のままであり、「総工程師」は2名在籍しているが、総工程師B氏を派遣してきた。
 これは総経理(社長)どうしの話合いで承知していたことであるが、これがK社経営のネックとなった。

 

<2011年7月時点の問題点・課題>
 B総工程師は、52歳。派遣元では30年以上の社歴があり、すべての工程や品質基準を熟知しているはずであるが、聞かなければ教えないという職人気質。また技術面は知っていても管理面は知らない。企業管理や労務管理は全く無関心であり、無知である。話は、理路整然とはしているが長く、ラインの長(部課長)に付けるには問題がある。
 A氏は工場経営の経験がなく、自分の工場運営に自信を持てなかったという面もあった。
1.当初は、B総工程師が幅広く管理責任を負いたいとのことで、高級幹部である品質保証部長とした。総工程師室を作り、すべての仕様書や基準書、規格書の制定や承認部門と位置付けた。


2.品質保証部長は、当初の案では、優秀なC氏の予定であった。B氏は実務面と労務管理面に弱いとの判断から、C氏を副部長として補佐させることとした。

3.上記の体制で進めたところ、1ヶ月も経たずして問題が出始めた。
・B氏は特段の指示命令はせず、労務管理もせず大過なく過ごすことに専念する名目幹部の状態。
・C氏はこれではK社設立の意味がないと一人厳しく管理。

4.結果的には、品質保証部内は二分され、二重管理となり、他部門からも相手にされなくなってしまった。特殊化学会社の生命線である品質保証部門が、会社のガンとなってしまったのである。

5.A総経理が、B氏の派遣元総経理(合弁相手)に相談したところ、「すまないが、B氏は当社でも不要。代わりはいないので出せない」とのこと。内部で「総工程師」を育てるか採用できるまでは、B氏を置かざるを得ないこととなった。

 

<対策(実例)>
1. 幹部教育の実施
 現状で必要なことは、K社の理念や目標との共感性を育て、職責の認識と実践、コミュニケーションの円滑化など、幹部全員の意識改革である。
 言っただけで終わる無責任な態度を改めるために、休日に幹部研修会を実施した。 中国人幹部が力を発揮するようになり、さらに勉強となったのは総経理はじめ日本人であった。そのような教育機会が親会社ではなかったからである。
 B氏は、ここで自分の偏った意識では、会社幹部は勤まらないということを認識。知識がいくらあってもそれを実践できる技能、すなわち管理能力がなければ人や組織を動かせないことを実感。


2. B氏に他の幹部から浮いていることを実感・認識させる
 B氏は、親会社から派遣されているエリートだ!総工程師だ!という意識が邪魔をしていること、そしてそれが他の幹部との(他の部門との)壁を作り、浮いた存在であることを研修中の演習場面で実感。その後の話し合いで認識。


3. B氏にK社でしか生きられないことを認識させる
 B氏は、K社では高級幹部である。それが勤まらなければ降りてもらう。戻りたくても戻る職場はなく、52歳の理論だけの者など何処も採用しないだろう。自分が生まれ変わって、K社で立派な幹部となる以外に生きられる道はないことを研修後の話合いにて認識。

 会社のガンは早期に発見し早期に治療しなければ全社に蔓延し、取り返しのつかないことになる。しかも、このガンは最も切除しにくいガンであるので尚更である。
 人を変えるには、そうかと実感させ、言いにくいこともズバリ指摘し厳しく対処しなければ本人のためにもならない。それは、中国人だからといって手を抜いてはいけない。