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作成年月日:2011年7月

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幹部不在会社での生産性向上

 

広州市のR社は、7年前に設立された100%日本出資の会社。特殊な皮製品を作り日本へ輸出している。過去は高収益であり、中国現地法人の経営などは適当でよいと考えており、幹部不在会社となっている。

ところがここ数年の法定最低賃金および周辺の賃金相場急上昇で、労務費の高騰に音を上げた親会社は対策として、同業界でしかも中国歴の長い日本人総経理を雇い入れ、テコ入れが始まった。新総経理のT氏は、創業7年目の会社でありながら6代目の総経理。

何もかもずさんな管理状態から如何に脱するか、今回の課題。

 

<2011年6月の課題>

現状は、総経理(社長)の下は、いきなり監督者(班長)で、部課長クラスの幹部はいない。したがって総経理が何でもしなければならない。

 

1. 製造部門の統括責任者不在のため、製造部長を採用することの可否。
2. 財務部門は会計担当者だけで、正しい数字が出ていないようだ。最悪なことに、不正を働いているとのうわさが絶えない。処分すれば過去の不正を、当局に訴えられる可能性もある。処分の可否。
3. 賃金の高騰に耐えるには、生産性の向上が必要だが、標準時間すらない状態である。
4. 製造部門監督者から、歩合給を導入してくれとの要求が強い。
5. 社員教育を徐々に開始したが、休日にやりたくても抵抗が大きくできない。そのため、平日に2時間/週しかできない。またカリキュラムの適性化。

T総経理は、大手のアパレル会社の総経理を務めた経験があり、問題点・課題をよく掴めることができると判断される。

 

<対策(案)>

1.高級幹部の採用

 総経理を補佐し、製造部門を統括できる者の採用は必須事項。現状の人材不足状態を考えれば適当な者はいないだろうが、少しでも可能性がある者を採用し育てる必要がある。

 この者が将来的には、副総経理なども務められるようになれば理想である。この下に、製造と管理部門それぞれに課長クラスを採用し責任と権限を与えるべき。

 人材の現地化と内部昇格は、速やかに進めるべきであるが、作業者の中から技能で抜擢した監督者に、管理者意識を植付けるのは至難であり管理者候補を採用すべき。

 

2.財務部門は、放任すれば納税のための会計しかせず、経営者や株主無視の決算書を作る。それゆえに、分かりにくく不正も出やすい。不正の噂は、必ず根拠があり99%正しい。もし、放っておけば、不正を許す会社だという悪評が立ち、総経理の威信はなくなる。したがって、処分は絶対にすべき。当局に「訴えたければどうぞ」という姿勢を見せれば訴えないだろうし、訴えられても、その根を断ち切ることの方が大事。

解雇できる証拠がなければ、理由は何でもよいので辞めてもらうべき。

 

3.生産性向上は、科学的でなければならない。それでない限り「労働強化」だと騒がれ実行できない。そのためにはIEエンジニアが必要である。現状は標準時間すらないようであればIEエンジニアは不在のようである。しかし、それを養成する暇はないので、デジタルムービーとコンピューターにより分析できるソフトがあるので、それを補助手段に使ってIEエンジニア候補を即戦力化すべきである。

 

4.歩合給は、標準時間すらつかめない段階で、下手に導入すると監督者の不正横行につながりかねない。監督者に媚を売る者に有利な仕事を配分し、エコひいきの人事考課ができるからである。多くの国営アパレル業者はそれで困っている。前項のIEエンジニアが育って後に、正しい標準時間をつかみ、それとの差異により歩合給導入は可能。

 

5.社員教育は、平日に短時間行っても知識教育に終わりかねない。事実カリキュラムをみると知識教育に終わっている。

現状で必要なことは、意識改革である。R社の理念や目標との共感性を育て、職責の認識と実践、コミュニケーションの円滑化などである。さらに、言っただけで終わる無責任な態度を改めるためには、就業時間外に缶詰めで教育する必要がある。

 初の数時間は抵抗もあるが、教育が進めばそれが当然になる。中国人も教育すれば日本人以上に力を発揮するようになり、中国人だからという偏見は無用である。

 

 R社の問題は、日系中小企業の典型的事例である。新総経理の経営意識が高いことから問題が表面化しただけのことと考えられる。

大多数の中小企業は、同じ問題を潜在的に抱え、日系企業の評価を落としている可能性がある。