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中国

作成年月日:2011年6月

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「基本給はいくらでもよい」
---- 手当乱発で賃金体系混乱

 

 蘇州市のK社は、6年前に設立された会社で、順調に業績を伸ばしている。特殊な製品を作るため、高収益であり、受注も増えてきた。そのため、新工場を近郊に建設中であり、工場移転は2011年9月の予定。
 賃金に係わることは中国人人事課長にお任せであった。人手が足りないといえば、直ぐに諸手当を増やして対処してきた。
 ところが、ここ数年の地域法定最低賃金の急上昇で、基本給自体も見直さなければならなくなった。
 K社の問題は、人事課長に適任者を、的確な賃金で採用しないと危険であり、不適格な人事課長にお任せは危険だという事例である。

 

<2011年5月の問題点>
(1)現状 
  基本給は安いが、総支給額は、地域相場に比して極めて厚遇しており、それが既得権となっている。 
1) 基本給: 製造部門の一般技能者は、地域法定最低賃金よりもやや高い程度。
2) 職場手当: 全員に10%程度ついている。
3) 勤務形態: 製造の大部分は設備費が高いので24時間勤務。
一組12時間の2組2交替勤務である。所定の8時間勤務を超える4時間は残業として扱っている。
4) 残業手当: 割増賃金は法定の150%ではなく、200%で計算して支給している。
5) その他: 食事の現物支給が毎日2食。残業食も自動的に出している。通勤手当も全員に出している。 皆勤手当も全員に出ている。
6) 管理職やスタッフ部門: 資格手当や高額な職位手当が乱発されている。
(2)問題点
 採用および離職防止のために安易に給与水準を吊り上げ、意味不明な諸手当の乱発で、永く勤め、長時間働けば優遇される体系となってしまった。
1)職場手当は、全員についたのでは手当の意味がなく、単に基本給を減らす目的としか見えない。
2)交替勤務手当が地域相場の数倍となり、基本給の50%前後である。
3)月間の残業時間は70時間前後で、法定限度36時間の約2倍。明らかな違法行為である。
4) 残業手当の計算基礎賃金を抑えるために、諸手当を増やしたということだが、残業時間そのものを減らすべき。
5)部門によっては手当を支給されない者は新人のみという実態もある。
6)基本給の支給基準が不明確であり、年功序列賃金に近い。


<考慮される対策・処理>
 他社と比較できるのは基本給だけであり、法定最低賃金の上昇とあいまって賃金体系見直しが急務と考えられ、小手先の諸手当の変更では、既得権との対立が出るため、人事制度・賃金制度を根本から変える。
 争議なしで現状を変えるための考慮される対策・処理は以下のとおりである。
(1) 職能資格制度の導入
1) 職能資格制度といっても、日本のそれとは大幅に異なり、人事考課による査定格差を大きくし、かつ資格等級基準を厳しくする。進級基準も厳しくする。降級基準ももうけ、降級、減給を容易にできるようにする。
2) 職能資格等級基準を明確にする。資格別賃金も明確にする。進級・降級基準を含めてすべて公開することで、目標を明確にする。


(2)手当の変更
1)職位手当、資格手当の整理と減額。多くの手当は基本給に組み込む。
2)交代勤務手当は、第一段階では1回いくらと決め、現状の30%減程度とする。それで減少する金額については基本給で調整する。以降毎年調整する。


(3)残業時間削減
 残業をし難い3組3交替または4組3交替勤務へ早急に変える。その場合は残業手当が大幅に減少し、退職者が出ることが予測されることから新工場での採用社員から実施する。


(4)幹部教育の実施
 新管理システムなどの実務教育はしているが、管理者としての在り方と責務、企業ポリシーの共有化、労務管理の在り方など基礎的な教育をする。


(5)人事課長の賃金見直しと教育
 人事課長は日本語が話せる中国人。庶務担当としては優秀だが人事制度・管理について経験不足と判断。本人の賃金は、地域相場の50〜100%増しであり、採用するすべての社員の賃金が高いことに繋がっている。このため新制度では低いランクとする。ただし、既得権の問題があるため、特別調整手当を支給し、この手当を支給されるのは異例な処置だということを自覚させ、教育もする。