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作成年月日:2011年5月2日

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毎日が異常事態! - 新入社員ばかりの新会社 -

 天津市のR社は8ヶ月前に設立されたばかりの会社で、近郊に工場を建設中で、操業開始は2011年9月の予定である。
 現在は仮事務所において開業準備をしているが、特殊な製品を作るため工場の管理基準が厳しくその対応に追われる毎日である。管理職が決まっていないため、総経理(社長)が全ての決裁を行う必要があるが、総経理は不在がちである。そのため日本人の総経理代行を置いているが、代行者も決裁書類への捺印等の業務に追われて他の業務ができない状態にある。

【問題点と相談内容】
 社内業務が以下のとおり「毎日が異常事態」になっている。
1)会社設立以来、「工場建設」自体のスケジュール及び方法がイレギュラーのため、計画を練り直しても(内的要因も当然あるが)外的要因により「異常事態」が多発する。
2)「異常事態」が常態化し、スタッフ全員が「本来あるべき姿」がわかっていない。いつも軽いパニック状態のため、一層総経理への依存性が高くなり、一層「無計画」が進み、周りが見えなくなっている。
3)異常事態を処理することがスタッフの仕事になりつつあり、落ち着いて業務を行っている(時間の)割合が非常に少ない。
4)総経理の承認事項を含め、大半の業務を電子メール及び携帯電話メールにより処理してしまっており、痺れを切らした総経理は「緊急時のみメール連絡により承認とするが、それ以外について、不在時には承認しない」こととしたが、メールの活用方法自体にもあまり慣れておらず、承認申請の乱発かもしくは手続不足かという両極端にあり、「交通整理」が必要である。

 このような状況下にあって、諸規定を整備しつつあるが、実際にそれを運用しようとすると混乱が生じるため、実施されていない。

1)現状に合わせた暫定的な規定が必要か。
2)このような状況を如何に脱するか。

【対策と処理】
 R社を訪問して現状を観察した結果、以下の点が明確になった。

1)混乱状況は理解できる。
2)その混乱は、新しい規定・制度の実行によるものだという面もあるが、根本的な原因ではない。
3)上記の混乱は、「ルールなし」の状態から「ルールに則った」状態に移行するための過渡的な現象とも考えられるが、根本的な原因は従業員たちの「仕事」に対する認識、そして「仕事」の仕方である。
4)諸規定の実施は混乱状態を顕在化させるきっかけになっただけである。

その状態を変えるために、下記の提案を行った。

1)ルールを変更しない
 現状ではルールの適用性を検証できないので、現状に合わせてルールを変更する必要はない。また、暫定規定に慣れてしまうと現状を変えることはできなくなるため、暫定規定の制定は好ましくない。むしろ、規定に合わせて仕事の進め方を考えさせるべきである。
2)社員教育の実施
  今まで新入社員に対する教育を行っていなかったが、R社で仕事するに当たっての基本中の基本を教えなければならない。日本流にいえば全員が中途採用であり、職歴、年齢、判断基準がバラバラの社員をまとめるためには次の教育が必要である。

@ 就業規則など諸規定に関する指導
A R社の社員としての意識付け、連帯感
B 仕事の管理方法、スケジュールの管理、PDCA
C 協調性など組織人としての基本など

 現状分析の結果、 「仕事」の仕方が現在の混乱情況の根本原因であることがわかる。それを改めることによって、諸制度の推進と検証がもっとスムーズになる。R社は、早速これらの提案を採用し、日曜日を利用して全員を対象に専門家による研修を行った。
 
  「中国人だから会社に対する忠誠心が無い。仕事の計画性が無い。言い訳ばかりする。」というのは偏見である。入社時の教育次第で日本人と同じ意識・意欲を持って働く。研修の成果はまだ見えないが、企業人としての意識付けと仕事を計画的に進めるようとする意欲が出たのは間違いない。