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中国

作成年月日:2011年2月1日

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古参幹部の解雇にかかわるトラブルについて

 蘇州市のA社は、創業して15年の電子部品製造業である。
 中国人T氏はA社設立時の功労者で、副総経理(副社長)兼管理部長(人事および財務担当)まで歴任した。
 総経理(社長)のY氏は、日本親会社の会長を兼務しているため常勤できないため、T氏を信頼し社印まで預けていた。しかし、数年経ってみたが、会社の成長に合わせての進歩がなく、何時までたっても旧態依然とした管理手法のままである。
 2008年の金融恐慌以来、Y氏は経営改革の必要性を感じ、T氏にそれを諭したが、「人海戦術の我が社はこれが限界である。」と取り合わない。仕方なく、2009年に日本人のD氏を採用し、総経理とした。
 昨年に至り、D氏が推進する管理手法が功を奏してきたが、斬新的なことをしようとするとT氏がことごとく邪魔をする。社印も返さず、T氏の合意が無いものには社印すら押せない。解雇したくとも、勤続15年の期限の定めのない契約となっており、それも難しく、困って相談を受けた。

<相談内容>
1 副総経理の解雇可否と金銭について
2 副総経理から社印を如何に取り返すか

<2011年1月現在の問題点>
  数回にわたり事情聴取をした結果、予想以上の問題があり、容易には解雇できないことが分かった。

1 期限の定めの無い労働契約を締結している
 中国の労働契約法(日本の労働基準法に相当する)では、勤続10年以上の労働者は自ら希望すれば、「固定期限の定めの無い労働契約を結ぶ」となっており、それにしたがって無期限の労働契約となっている。それ自体は、法律にそったものであり問題はないが、職務は「副総経理」、賃金は約1万元と記載されており、その変更条件と期日が明記されていない。すなわち、定年まで職務と賃金を変えることができない契約書となっている。

2 年齢が定年まで5年を切っている
 T氏は満56歳であり、定年年齢60歳まで5年を切っている。労働契約法では、定年まで5年以内の者は解雇してはならないと規定しており、現状で解雇するには定年までの賃金を支払う必要がある。

3 印鑑管理規定で副総経理が管理することが定められている
 印鑑管理規程はT氏が作成したものでありT氏に都合のよいものとなっているが、社印が押され、会長も承認していることから有効である。規程によると、社印は副総経理が保管・管理し、副総経理の許可を得なければ押印できないことになっており、例え総経理であっても自由に押印できないことになっており、問題である。

4 T氏が出資したこととなっている
 T氏は、A社が創業してまもなく、会社に対する忠誠心を表すため2万ドルの出資を提案した。Y会長はそれを歓迎し受け入れたが、事情があって資本金には組み入れず、親会社の預かり金として覚書を取り交わした。
 覚書には配当などが明記されているとのことだが、未だ覚書の提示がないため詳細は不明である。しかし、解雇するなら3万ドルで買い取ること、配当として15万元を払うなどの要求を出した。

5 経済補償金(退職金)の要求
 T氏は、「相互に不信感ができた以上、退職には応じる。しかし、勤続1年に付き1ヶ月の経済補償金(日本の退職金に相当する)と、定年までの賃金を上乗せして支払え。」と要求してきた。

<対策提言と今後の進め方>
1 契約上の注意
 中国に会社を設立する場合には必ず世話になる人がいるものだが、その者が会社の幹部として必要かどうかは別である。仮に設立当初必要人物であったとしても、会社が成長した後でも必要かどうかは別である。 安易に、長期にわたって拘束される契約はすべきではない。

2 今後の処理
 T氏は出資金の割り増し買い取りと配当、経済補償金のセットで交渉することを要求していることが問題を複雑にしている。

 @ 出資金に関しては親会社に一任し、交渉を切り離す。
 A 経済補償金については、過去の功績を多少なりとも評価し、法定以上に支払い、誠意を示す。
 B 最優先事項として、強制措置を行ってでも社印を取り戻す。応じない場合は法廷に出ることも覚悟し、なおも応じない場合は懲戒処分も視野に入れる。